フライ

リアリティ・バイツのフライのレビュー・感想・評価

リアリティ・バイツ(1994年製作の映画)
3.8
昔見た時は、音楽やキャストの秀逸さに、それなりに楽しめた青春映画だが、改めて観ると、この当時のアメリカの時代背景に詰め込まれた若者や女性の色々な葛藤や差別、傲慢さや偏見まで見えてきて想像以上に深い内容に驚きと面白さが。
今のアメリカの姿に一部重なる部分が見える面白さもあった。

ウィノナ・ライダーが演じるリレイナは、大学卒業で総代を務める優秀な女性。しかし答辞の最後で凡ミスを犯す間の抜けたところも。卒業後は何か意義のある事したいと考える芯の強い彼女だが、在学中の3人の親友、イーサン・ホークが演じるリレイナに好意を持ちながらも色々な女性と付き合う優秀なトロイや、沢山の男性と一夜限りの関係を持ち日記につけるビッキー、同性愛者で悩みを抱えたサム達との交流をビデオカメラに収めドキュメンタリーを製作したいと考えていた。
リレイナは卒業祝いとして、離婚した両親とそれぞれのパートナー、そして親友のトロイと一緒に食事をするが、両親は反目仕合い最悪な状況に。
テレビ局のADとして雇われたリレイナだが、上から目線でモーニングショーのコメントにケチをつけるが、誰でも出来る簡単な仕事をミス。ややこしい言い訳をするリレイナに、女性に対して偏見のあるMCは、辞めさせるぞと脅される。
仕事帰りに父親から貰った中古のBMWで、GAPで働くビッキーを迎えに行くが、リレイナの投げたタバコが原因で、ベン・スティラーが演じるTV局の編集局長マイケルの車と衝突事故に。優しいマイケルはリレイナを気に入り、事故については水に流し、ディナーの約束までしてしまう。
家に帰ると何故かトロイとサムが玄関から出て来て、驚いたリレイナに対してビッキーは、仕事をクビになったトロイの同居を許したと伝えられ困惑する。
そんな彼らが、自ら経験してきた出来事で、自分の中に有り気付かない傲慢や偏見、世間の差別や風当たりの強い実社会に晒されながら、友情や恋を通し成長して行くのだが…

若々しいウィノナ・ライダーやイーサン・ホーク、ベン・スティラー、そして作品内で流れる音楽を聞くと、当時を思い出す懐かしい作品だが、改めて鑑賞し驚いたのは、ベン・スティラーが監督だった事。当時は音楽やキャストに注目したくらいで、そんなに絶賛する程面白いとは思って無かった青春映画だが、改めて観ると若者の傲慢さや葛藤、現実社会の厳しさをシュールに描いていたのには驚いたし、それを若いベン・スティラーがこの視点で監督していた事に驚いた。
誰でも若い時大なり小なり経験している、実社会に出て、そして大人になって色々な壁にぶつかり気付き成長して行くのは、仕事だけではなく恋や友人との交流にもあったかと。そんな若い時の楽しくもあり、苦々しく辛い事まで思い起こさせてくれる内容に、甘くほろ苦い青春恋愛映画とは違う、当時のアメリカのリアルな厳しさまで感じさせてくれる青春恋愛群像劇に想像以上の面白さを感じた。
本作で一瞬語られる今アメリカで問題視されている妊娠中絶問題や、最近亡くなった女性の最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの事等等、女性問題を取り上げる視点の面白さも。

1990年代前後の事を知っていると音楽や時事問題など色々な話題に面白さを感じるとは思うが、知らなかったとしても若い時に抱えている問題や傲慢さなど心に染みる部分も有ると思うし、この当時の厳しい現実社会を垣間見せてくれる一風変わった青春群像劇を楽しめると思うので、興味が有れば是非!
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