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タカダワタル的のsoのレビュー・感想・評価

タカダワタル的(2003年製作の映画)
4.0
高田渡が亡くなって15年。
亡くなったほぼ同時期に渡さんの音楽を知った自分はライブへ行くことが出来なかったものの、本作に収められている渡さんの生きた姿を(主に酔った姿を)観ることができるだけでも、本当に有難いことだと思わなければいけない。

楽屋で酒を飲もうとしてスタッフの女性に止められる渡さん。
ライブの主催者である柄本明に出演時間を値切ろうとする渡さん。
散歩中に出会った犬を撫で回す渡さん。
全く広くない質素な自宅のリビングにて映画のスタッフ達と酒を飲み真っ先に眠ってしまう渡さん。
そして、昼間から「いせや」に入っては顔見知りを見つけて駆け寄り酒を飲み始める渡さん。

これらの光景は、おそらく渡さんの日常、そのものだ。
映画を観ていれば、そんな渡さんの生活と、渡さんの歌が、全く同じ匂いであることに気がつく。
生活と音楽がこんなにも地続きになっているミュージシャンが他にいるだろうか!
そして普通は時勢や自分の置かれている環境によってやることが変わってしまうものだが、渡さんは一貫していた。最初から最後まで変わらなかった。
そこに皆驚き、尊敬し、惹かれるのだと思う。

映画を観ていて何よりも印象深いのは、渡さんの周りにいる人の笑顔。とにかく皆、笑顔。
バンドメンバー、スタッフ、お客さん、馴染みの店の店主まで、渡さんの近くにいる人が皆とても幸せそうなのだ。
渡さんは肝臓の病気で入退院を繰り返していたのだが、ある時医者から「いつも渡さんの病室だけ、にぎやかなんです。もっと病院らしく落ち着けないでしょうか?」と言われたというエピソードが渡さんの著作「バーボン・ストリート・ブルース」にも書かれていた。

頑固で、人懐っこくて、
皮肉屋で、やさしい、
渡さん!

こんなことを書いていると、やっぱり一度だけでも生でライブを観てみたかったという思いがどうしても膨らんできてしまい、やりきれない。
あるいはせめて、吉祥寺でほろ酔いで歩く渡さんを見かけては、遠くから「渡さん!」と声をかけてみたかった。
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