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善き人のためのソナタの3Dメガネのレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
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1984年東ドイツ
行き過ぎた国家保安省 通称シュタージが国民の自由と権利を剥奪していた時代
そのシュタージの1人で社会主義を心底信仰する1人の男、ヴィースラーの物語


今まで信じていたものが徐々に崩れ去っていくことは深い葛藤を生むんではないか
ヴィースラーは東ドイツの社会主義を信じていたし素晴らしいものだとも思い込んでいた。しかし立場を変えてみてみるとその歪さに気付き始める。そして人としての当たり前の感覚に戻ってゆく


一種の洗脳に近い組織に身を置くとそれがその人の常識となり、物事の判断を鈍らせてしまう恐れがある。ヴィースラーはこれまで尋問官として役割を全うしてきた
そして彼は盗聴の仕事を任される
一市民の生活を音声を通して実体験していくうちに徐々に人間としての感覚を取り戻し、かつての感情を蘇らせていく。善き人へと舵を切っていく


私利私欲の塊である上層部。それに逆らえない無力さ、せめてもの優しさをささやかに送り続けるヴィースラー。誰からも気づかれず、いや気づかれてはいけない優しさ
それでも彼に灯った良心の明かりは消えない、強まっていく


中盤あたりからサスペンス性を孕み、徐々に引き込まれていく。そしてラストはなんとも味わい深い締め方であり、序盤からは想像もできない結末へ
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