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善き人のためのソナタのeulogist2001のレビュー・感想・評価

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)
4.2
粛々と静かに大きな起伏もなくクライマックスに向かう。小さな音がいつしか重層的に響き合い、ラストは感涙ものだった。

旧東ドイツのシュタージが国民を監視する社会の中で、ひとりの作家が辿る運命を描く。

そんな暗闇にありながらも弱くても揺るぎない光があったと思わせられる。一縷の救いだ。

現在も一部の国ではこうした管理がなされているし、かつての戦時中の日本も似たようなものだろう。

そして監視する側は自分の意思こそがルールとなれば恣意的になり私利私欲に走り腐敗するのは必然だ。それは構造的なものだという事がよく分かる。社会主義国家が次々と崩壊したのは理念ではなくその国家管理の方法や実践にこそ問題があったのではないかと考えざるをえない。

管理や監視重視の社会構造は効率やコンプライアンス、モラルなどの一見、正義の顔をしながらにこやかにすり寄ってくる。まさに今や民主主義国家においても他人事ではない。緩やかに真綿で締められていると感じる閉塞感はここに由来しているのではないか。

シュタージにおける20万人の協力者は現代ではネットの世界に身を隠してさらに大きく勢力を拡大している、と言ったら過言か?いや妄想なのか。

ヴィスラーになれるか?ヴィスラーでいられるのか?ヴィスラーに共感できる感性を持ち続ける事が果たして出来るのか?

問われているのはこのわたしだ。





と、ここには書いておこう。笑
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