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恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズのtjZeroのレビュー・感想・評価

4.3
① この時季にレビューすべきは『ラヴ・アクチュアリー』とか『グレムリン』なんかが王道なんでしょうが、「もうレビュー済みだし」とか「もっとベタじゃないやつを」って思ってるアナタ…。

一方、

② 『ボヘミアン・ラプソディ』に『アリー』、クラプトンやホイットニーの伝記映画など、ロック&ポップス関連の映画が盛況ですが、「年末だし、しっとりとした音楽もいいなあ~」と感じてるそこのアナタ…。

①と②、両方の希望を叶えてしまうのが、本作なのかもしれません。

副題&原題の”ファビュラス~”とは、ホテルのラウンジなんかでカクテルの伴奏をする兄弟ビアノ・デュオの名前。
これを実際の兄弟である、ボー&ジェフ・ブリッジスが演じています。

ホントの兄弟ならではの、演技でも演奏でも息がピッタリ合った相性の良さ。
ふたりが衝突するシーンなんか、リアルな兄弟ゲンカの迫力があります。

この鉄板のコンビに、ヴォーカルとしてミシェル・ファイファーが異分子として加わり、どんな”化学反応”が起こるのか…というのが見どころ。

カットつなぎや編集の妙による、映画全体のリズムが音楽的で、生理的に気持がいいです。
フィルムが五線譜で、俳優たちが音符となって自在にメロディーを奏でている感じ。
譜面にある音符の位置で旋律が変わるように、画面のどの場所に誰が映っているのか、ひとり(ソロ)なのか、ふたり(デュオ)なのか、三人(トリオ)なのか、という繊細な指揮(演出)によって流れるようにストーリーが進んでいきます。

”イパネマの娘”、”ルック・オブ・ラヴ”、”マイ・ファニー・ヴァレンタイン”といったスタンダードの名曲の数々が、洒脱なデュオ・ピアノと甘いヴォーカル(ミシェルが自分で歌っているのがエラい!)によって魅惑的に響きます。

ジェフが演じる天才肌の弟が、己を見つめ直すかのように一心に鍵盤を叩くジャズ・クラブの壁面に、バド・パウエルやソニー・クラークといったジャズの名門レーベル”ブルーノート”のピアニストのアルバム・ジャケットがさりげなく飾ってあったりして、「この監督さん(脚本も兼ねるスティーヴ・クローヴス)、よくわかってらっしゃる♪」という満足感も得られます。

クリスマスや年越しのライヴ・シーンも出てきますし、これからジャズを好きになる、またはすでに愛聴してるかたにもピッタリの洒落た作品だと思います。
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