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日の名残りのmiiのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
3.9
アンソニー・ホプキンス(スティーブンス)が執事って はまり役!
そして女中頭として彼と共に働いていたのがミス・ケントン(エマ・トンプソン)。

生涯 人生の主役は自分ではなくご主人様として生きてきた
スティーブンスの 忠実な執事としての彼の人生を描く。

第一次世界大戦後 広大なお屋敷にて仕える主はダーリントン卿。
各国の要人を招いて 世界情勢を語る秘密会議の場として使われてきたダーリントンホール。
「品格」を重んじてきたスティーブンスは
淡々と卒なくこなし 主から信頼を得ていた。
それが 執事としての喜びなのでしょう。

一緒に働きながら ミス・ケントンは「好き」のサインを送っているのだけれども
立場上 制してしまうスティーブンス。

若い女中は 屋敷内で惚れた男とさっさと結婚してしまう。
自分の心に忠実でもあり またその勢いは 若さ故。
スティーブンスとミス・ケントンには
年輪の重みの憚りが 邪魔をしてしまうのかもしれない。

ミス・ケントンと結婚したなら
あのお屋敷を取り仕切る最高のパートナーになると思うのだけれど
それじゃダメだったのかしら?

職務に忠実で 自分の心や意見などは二の次。
いや 殺してしまっている。

20年後···
あの時優秀だった彼女に復帰してもらいたいと
彼は彼女に会いに行く。
ほんの少しだけ 初めて嬉しさと動揺を見せた彼であったけれども
その後 すぐに掻き消されてしまう。

彼女は必要とされている夫の元へと行ってしまう。
仕事のパートナーとして必要とされるのではなく
女として 必要とされたかった彼女。
スティーブンスにとって 彼女よりもお屋敷の主人が第一の主であった。

二人は もう会う事はないのでしょうね。
涙を溜めた彼女を見送るスティーブンス。
後悔の面持ちが垣間見える彼に「日の名残り」というタイトルがしっくりくる。

ダーリントンホールの新しい主となったルイスが
あの20年前の会合の時に 1人だけ異を唱えて孤立したけれども
今があると会話を交わす。

自分の想いや考えを押し殺してきたスティーブンスとの対比で
彼は成功と幸せを手にしている。

人生は一度きり。
過ぎたあの日々は取り戻せないという
文芸作品らしい趣きが静かにしみじみと染み渡る。
名優アンソニー・ホプキンスの抑揚を抑えた演技も華を添えていました。
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