ぬーたん

日の名残りのぬーたんのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.5
カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞のニュースが飛び込んで来たので、大好きな今作を再鑑賞。
しみじみと心に響く名作。
若い頃に初めて観た時の印象は、話に抑揚がなく冗長でつまらないというものだった。それが年を重ねて観るうちに、好きな作品のひとつになった。スルメのように段々と味が出て来る、奥深い作品だ。

1950年代、第二次世界大戦の頃のイギリス・オックスフォードのダーリントン卿の邸宅が舞台で、執事のスティーヴン、女中頭のケントンが主役。
近年評判の高かった『ダウントン・アビー』に設定が近い。
広大な敷地に豪華な建物。軽やかに流れる音楽に乗せて、使用人たちが自分の仕事をこなしてる。その辺りの構図もこの作品をお手本にしたのではないかと思う。
執事役はアンソニー・ホプキンス。
ホプキンスあっての作品だ。『羊たちの沈黙』シリーズのレクター博士の次にこの執事役は彼の当たり役と思う。
ホプキンスの抑えた演技と苦悩し迷う表情。言葉はいらない、その表情で気持ちを語ってしまう演技。見事ですね。
そして、女中頭役のエマ・トンプソンが気取っていなくて、またいい。

今は亡きそして事故前の元気なクリストファー・リーヴのがっちりして逞しい姿が泣けて来るなあ、ヒュー・グランドは若い!レナ・ヘディは初々しい。そうか、24年も前の作品なんだなあ。
2人のやりとりが、観ていてイライラ、もどかしいよ。不器用過ぎる。

2人がそれぞれ選んだ道。
そして20年振りの再会の日。

じんわり泣けるシーンを後に、彼が選んだ執事の職をラストに。
きっと、最期まで誇り高かった父、老スティーヴンスと、
同じように執事として生き同じように死んでいくのだと。

素晴らしいラストでした。
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