Solaris8

日の名残りのSolaris8のレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.2
12/13 渋谷のル・シネマで「日の名残り」を観て来た。

嘗て、ダーリントン卿の友人だった米国のルイスが、英国のダーリントンホールの新しい家主となって、米国内でヴァカンスを過ごす事になり、執事のスティーヴンスは英国のコーンウォール地方へ一週間の旅に出た。その旅行中に起きる現在の物語と30年前のダーリントン卿が健在だった在りし日の物語が並行して語られる。

ダーリントン卿は貴族として世界の名だたる来賓と交流しながら英国を支えようとし、執事のスティーヴンスもその準備や接待に追われ忙しい日々が続くが、ダーリントン卿はドイツに翻弄され、執事のスティーブンスも父を亡くし、恋心が在った女中頭のケントンを結婚退職で失う。

それから20年、旅の中で、恋心を密かに持っていたケントンの元を訪れ、久し振りに再会を果たす。風光明媚な海辺の町、英国のウェイマスは夕暮れの桟橋の明かりが点灯し始める頃が一番美しいと云われるそうだが、黄昏を迎えた二人の人生が、その日の名残りに最期の輝きを見せる。

日が暮れて雨が降ってきて、この期に及んでも残りの人生を執事に捧げると話す主人公と、孫が出来て、この地を離れられなくなったと言い、涙ながらにバスに乗り込むケントンとの二人の永遠の別れが儚い夢のように思えた。

原作のダーリントンホールはオックスフォードに在る設定だそうで、自分も一度だけ、初冬のオックスフォードへ電車で行った事が有り、車窓の田園風景を見た事があるが、英国の田園風景が美しい。映画のロケ地はコッツウォルズ南西部だそうだが、田園風景の中に夕陽が落ちるシーンが有り、日の名残りの佇まいが美しかった。

コッツウォルズはガーデニングの聖地だが、自分が好きなアウトドアの世界でもトレッキング、バードウォッチング等、英国の日本への影響力は強い。執事のような職人気質が高い仕事に一生を捧げるという英国人に親しみを覚える日本人も多いと思うが、イシグロさんの存在が日本と英国の架け橋になって知らなかった映画を観れたのは、良かった。
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