おじいちゃん執事の"好き避け"をもどかしく見守る映画。
若い家政婦ミス・ケントンに恋心を抱いているけど、それを表に出すことが出来ないまま、ついそっけなく接してしまう不器用なスティーブンスさん。
執事としては一流。感情を表に出すことを良しとしないのは職業病やろうし、屋敷内に色恋を持ち込まないのは彼なりの美学。
スティーブンスさんは恋愛事自体を遠ざけたい人で、屋敷の使用人も「逆」顔採用。美しい人の採用はハナから避ける徹底ぶり。
「素晴らしい主人の元で生涯仕えるのが最高の幸せ」って言ってたくらいやから、そもそもこの恋愛を成就させたい訳じゃない。
でもせっかく両想いやったのに、正直勿体ないなぁ。
ラストの方では、執事として主人に仕え己の信念を貫く事以外の幸せもあったかもなぁ、ってうっすら後悔してるようにも見えたけど……どうなんやろか。
主人公のアンソニー・ホプキンスがほとんど自分の考えを話さないから、表情で読み取るしかない。
それにしても、なかなか味のある表情するんよな、ホプキンスさんが。
プライベートタイムで自室で本読んでるシーン。ミス・ケントンに「なんの本読んでるの?見せてよ」ってじゃれてこられた時の表情とか絶妙やった。
"私に構わないでください"と"そんなグイグイ来られたら惚れてまう"が入り交じった無表情やけど目が怖い顔。
レクターが品定めする時の顔やん、ってくらい迫力あったわ。
もう年も取って、人生もうすぐ終わりますけど、長年信念貫いて生きてきたけど、これホントに正しかったのか?
もっと柔軟に生きた方が幸せだったんじゃなかろうか?
年取ってもまだ葛藤してますわぁ…っていう映画。かな、たぶん。
ほぼ室内が舞台で、ムスっとしたおじいちゃんが、くっちゃべってるだけの静かな映画やけど、照明の当て方とかも拘ってる感じで、観てて飽きなかった。