ぱやぱや

日の名残りのぱやぱやのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.3
あまりに感情的になりすぎてレビューがひどいことになってしまった
名優アンソニー・ホプキンスの演技が全ての切ない名作…人生について考えさせられるラブストーリー


概要はFilmarks上にあるので簡単に…

英国のある貴族のお屋敷に人生を捧げ、忠実な執事を勤めてきたスティーブンス(アンソニー・ホプキンス)が、新しい主人から暇を貰ったので、1人旅がてら、昔の同僚で家政婦長として働いていた女性に会いにいく
その道中の長い道のり、スティーブンスは前の親ナチであった主人に仕え、その家政婦長との淡い恋も捨てた自身の人生を振り返る


以下ネタバレあり感想






胸が痛くなり顔を背けたくなる…でも目を逸せないような名シーンの連続で、観おわって1週間経つのに今も感想をうまく言葉にできない

主人公、執事のスティーブンスは、殆ど話さない
話をしたところで業務の内容か、それ以外では基本的に核心は言わない、はぐらかすような台詞ばかり
基本的に表情も変わらないし、笑うことも泣くことも怒ることさえない
なのにアンソニー・ホプキンスの雄弁な演技のおかげで、言葉より駄々漏れくらい本心が伝わってくる

スティーブンスはきっと傷つきやすく臆病で、仕事に没頭するしか生きる道がなかった不器用な人なんだろうと思う
本当はラブロマンス小説を恥ずかしそうに読むくらいには人を求めていたのに、それがついに行動には出来なくて、かといってプライドもあるから、臆病な自分も出せず人を遠ざけて硬直してたんだよね

そんなスティーブンスを愛した家政婦長との、互いに言葉に出さない恋愛が見ていて本当に辛かった
きっとお互いの気持ちはちゃんと分かっていたけど、行き遅れと言われる年齢になった家政婦長が待ちきれなくなった気持ちもすごくよくわかる…
多くの場合、社会的圧力もあるし、時代がこれなら尚更女のほうがそうなってしまうよね

でもたぶん家政婦長がお屋敷の外の世界に行ってしまったきっかけ自体は、年齢とかそういう所ではなく、煮え切らないスティーブンスに傷つきすぎてボロボロになったからだと思う
臆病なままのスティーブンスが踏み出してくれないなら…と試して傷ついて絶望して、結局疲れてしまって、自分を愛してくれる人のところを行きたくなる気持ちが、台詞には何も出ていないのに凄く分かってしまった

ここで冒頭を思い出す
そういえばはじめの方に、スティーブンスが家政婦長からの手紙を受け取って、またお屋敷に呼び戻すため、新たな主人に許可をとるシーンがある
あのときのスティーブンスは珍しく嬉しそうな気持ちが抑え切れてなかった
その理由はこういうことか!と思い当たる
スティーブンスはまた好きな人と居られるのが嬉しくて堪らなかったんだよね

それなのにあのラスト、結局人生がすれ違う2人
二度と会うこともないでしょうと話すところは、もう苦しくて泣くに泣けなかった


煮え切らないし現実的には動けないのに、心では相手のことをずっと思っている…というスティーブンスの一途で不器用で臆病でいじらしい恋心の話が、苦味たっぷりに、当時(第二次世界大戦にむかう時代)の背景とともに描かれた名作だった
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