日の名残りの作品情報・感想・評価

「日の名残り」に投稿された感想・評価

Solaris8

Solaris8の感想・評価

4.2
12/13 渋谷のル・シネマで「日の名残り」を観て来た。

嘗て、ダーリントン卿の友人だった米国のルイスが、英国のダーリントンホールの新しい家主となって、米国内でヴァカンスを過ごす事になり、執事のスティーヴンスは英国のコーンウォール地方へ一週間の旅に出た。その旅行中に起きる現在の物語と30年前のダーリントン卿が健在だった在りし日の物語が並行して語られる。

ダーリントン卿は貴族として世界の名だたる来賓と交流しながら英国を支えようとし、執事のスティーヴンスもその準備や接待に追われ忙しい日々が続くが、ダーリントン卿はドイツに翻弄され、執事のスティーブンスも父を亡くし、恋心が在った女中頭のケントンを結婚退職で失う。

それから20年、旅の中で、恋心を密かに持っていたケントンの元を訪れ、久し振りに再会を果たす。風光明媚な海辺の町、英国のウェイマスは夕暮れの桟橋の明かりが点灯し始める頃が一番美しいと云われるそうだが、黄昏を迎えた二人の人生が、その日の名残りに最期の輝きを見せる。

日が暮れて雨が降ってきて、この期に及んでも残りの人生を執事に捧げると話す主人公と、孫が出来て、この地を離れられなくなったと言い、涙ながらにバスに乗り込むケントンとの二人の永遠の別れが儚い夢のように思えた。

原作のダーリントンホールはオックスフォードに在る設定だそうで、自分も一度だけ、初冬のオックスフォードへ電車で行った事が有り、車窓の田園風景を見た事があるが、英国の田園風景が美しい。映画のロケ地はコッツウォルズ南西部だそうだが、田園風景の中に夕陽が落ちるシーンが有り、日の名残りの佇まいが美しかった。

コッツウォルズはガーデニングの聖地だが、自分が好きなアウトドアの世界でもトレッキング、バードウォッチング等、英国の日本への影響力は強い。執事のような職人気質が高い仕事に一生を捧げるという英国人に親しみを覚える日本人も多いと思うが、イシグロさんの存在が日本と英国の架け橋になって知らなかった映画を観れたのは、良かった。
カズオ・イシグロ原作。アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン。名優の名演。あのとき言葉にしていれば・・・。何十年経っても、忍ぶ恋は忍ぶ恋。今の時代、こんな恋の形はもうありえないだろうな。
櫻

櫻の感想・評価

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夕暮れは最も人々が待ちわびる時間であるらしいが、明るい光の中にあった日々を名残惜しむ時間でもある。車のハンドルを握り、あの頃を思い起こしながら、向かうはその光の中で共に過ごした忘れがたき女性のもとへ。

第一次世界大戦後のイギリス。その頃歴史が蠢いており、激動の時代の縮図が白い屋敷の中にあった。それを執事として影で支えていたひとりの男。主人に仕えることに誇りを持ち、私情や意見を極力控え、てきぱきと働く彼の前に現れた、ひとりの勝気な女性。様々なことによく気がつく彼女を段々と頼るようになり、いつしか恋心を抱くようになるが、触れ合うことはおろか愛を言葉にすることもしない。唯一ひとりで過ごせるあの部屋で、彼はどれほど物思いにふけり、胸を焦がしていたのだろう。彼女が屋敷を出ていくと決意した時、涙を流しながら言葉を殺すしかなかったふたりの気持ちを想像するだけで、どうしようもなく切なくなる。彼女は止めて欲しかったんだろうなあ。

割れてしまったワインの瓶は元には戻らないように、もうあの頃には戻れない。だけども、あまり変わらない姿の君と再会することができて、私はそれだけでいいと思った。どうか幸せに暮らして。涙をこぼしながらバスに乗りこみ、遠ざかっていく君の姿を忘れない。それでは、さようなら、どうかお元気で。
ニコ

ニコの感想・評価

4.0
ノーベル賞作家、カズオ・イシグロの原作を、『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞を受賞したジェームズ・アイヴォリーが映画化。主演をアンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソンが演じます。

さて、観終わっての感想ですが、少なからぬ数の恋愛映画を観てきたと自分では自負しますが、こんなに切ない恋愛映画は初めて見ました。お互い相手を好きなのに、相手の幸せを願って一歩踏み出せない...。
大人の恋って感じでしょうか?切なすぎて涙が出てしまいました。
おみ

おみの感想・評価

4.0
そうか。
カズオイシグロ原作か。

なんて切ない。終始切ない。
久々にラブアクチュアリーを観たら、やっぱエマトンプソン演技上手いなぁと思って、気になって観ていなかったこちらを観てみたが。
やっぱ上手い。
強さも、脆さも、絶妙な感情も表現がうまい。顔だけじゃなくて、手とか足とかでも表現してる。


最後の鳩のところで、胸がしめつけられた。
ハル

ハルの感想・評価

3.7
抱擁や接吻を描くばかりが恋愛ではない。そんなものを直接画面に出さなくとも、男女の心の機微を表現することができる。

この作品はそのことを最も素晴らしい形で表現した物語だと言えよう。原作はカズオ・イシグロの同名小説。

執事のスティーブンスは職業人としての分際を守るあまりに、主人を諫めることができなかったばかりか、自身に想いを寄せてくれた女性を受け入れることもできなかった。そのことが「日の名残り」という苦いタイトルに集約されている。

「こじらせたおじさんの話」と言ってしまえば身も蓋もないが、彼のように生き方が下手くそな男性は世の中に一定数いるはずである。
「スティーブンスさん、私、求婚されたのです。でも迷っています。返事に迷っています。その事を言っておきたくて。」
「わかりました。」
「スティーブンスさん、長い間一緒に働いてきてそれだけ?」
「ですから、先ほどおめでとう、と」
「詳しい話をお聞きになりたい?」
「用事がありますので、これで失礼を」

そのとき、彼はやさしくできなかった。前から想いを寄せていたはずなのに。

「ところで貴女が辞めるという話ですが・・」
「私は辞めません。私はもどる家族もありませんし、臆病者なのです。臆病者なので怖くなったのです。お屋敷から出て孤独になるのが怖いのです。私の主義主張なんてその程度です。ですから私は恥じているのです。」
「ケントンさん、貴女は得難いお人だ。この屋敷には必要なお方です。」

この時、彼は心の中で満足していた。彼女が辞めるつもりがないことを聞いて、本当に嬉しかったはずなのに。

そしてまた、あのときは、悪戯っぽく彼女から問い詰められ、読んでいる本をむしり取られて、感傷的恋愛小説ね、と笑われても、それがちっとも悔しくなかったことも、今は遠い昔の思い出でしかない。

「さようなら、もうお会いできないと思いますが、お元気で。」

誰にでもある、遠い日のあの決別は決して消えることはない。
Kana

Kanaの感想・評価

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8月くらいに見たんだけど、すっかり記憶するのを忘れておった…
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