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彼女が消えた浜辺の708のネタバレレビュー・内容・結末

彼女が消えた浜辺(2009年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

よく知らない人物を、やたらと旅行や集いに誘わない方がいいですよ、ホント。

みんながみんな微妙に隠し事をしたり、その場しのぎの小さな嘘をついたり。でも、決して悪意からの嘘ではないものの、それが絶妙に悪い方向に噛み合ってしまって、どんどん悪い方向へ…という、アスガー・ファルハディお得意の展開。人間の隠し持っている醜悪がアク出しのように出まくります。

厳格すぎるイスラムの戒律よりも、西欧的な自由な生き方を実現したい年代の集まりがこの旅のメンバー。そんな中、戒律に縛られたり婚約者の束縛によって自由になりたくてもなれないエリが参加。戒律が厳しいからこそ、婚前の女性が男性を交えた旅行に行くのはご法度なんだと思います。だから、貸別荘の管理人のおばさんにもアーマドとエリが新婚でハネムーンだと、嘘をついたんでしょう。そういうメンバーたちの自由さがエリに刺激を与えつつも、エリはずーっと戸惑っていて一泊で帰ると発言。気が気じゃないヴァカンス。

そんな中、ドイツ人女性と離婚したばかりのアーマドが言い放った

「永遠の最悪より 最悪の最後がマシ」

という言葉のリアルさが刺さりまくって、子供たちと遊んでいた凧が空高く自由に舞い上がるのを見ていたら、プッツリと糸が切れたように行方をくらますことを咄嗟にひらめいたのでしょう。子供が海で溺れたタイミングでどさくさ紛れ。自分が幼稚園の先生であることなんて、もうどうでもよくなって、とにかく自由になりたいという一心だったんだと思います。

エリの失踪と共にいろんな事実が次々発覚して、人間関係が絶妙にもつれて崩れていくのがヒヤヒヤします。誰かが何か悪さをしたわけでもないのに、エリの失踪によってバタバタとドミノが倒れていくかのよう。まぁ、セピデーの余計なお世話や善意の押しつけ、諸々の隠し事がいろいろと災いしてる部分はありますが。

死体で発見された女性。ハッキリと顔が映し出されていませんでしたが、あれはエリではなかったんだと思います。婚約者のあの涙はホッとした安堵だったのと同時に、どこに行ったのか不安によるものだったんじゃないでしょうか。結局エリは溺れて死んだのか、テヘランに帰ったのかは明示されていませんが、そのモヤッと感を観客にすべて託す胸糞悪さがたまらなく好きです。
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