shxtpie

探偵物語のshxtpieのレビュー・感想・評価

探偵物語(1983年製作の映画)
2.5
この頃の薬師丸ひろ子が歌う曲は名曲ばかりでため息が出るほどだが、それにしても、薬師丸の歌声は妙に成熟しており、その響きには湿った情感、達観や諦念の蒸気が多分に含まれている。あまりにも幼い 18 歳の薬師丸は、『探偵物語』での役柄に反して、大学生には到底見えないものの、この歌声とのギャップはなんなのだろうか。

そのギャップは映画そのものにも宿っており、大瀧詠一と松本隆が生んだ主題歌の重さに対して、『探偵物語』は、加藤和彦の軽妙な劇伴に彩られた、可愛らしいフィルムだ。赤川二郎の原作を忠実になぞっているのか、どこか間の抜けたスラップスティックコメディミステリーを、薬師丸と松田優作が演じる。

薬師丸と松田も好対照である。天真爛漫な薬師丸の躍動感(彼女は映画の中で何度も壁をよじ登り、閉ざされた門を乗り越える)とは対照的に、松田の声や所作には拭い去りがたいメランコリーが漂っていて、重みがある。「どこか抜けた、ドジな探偵」という風には、あまり見えない。ドラマの『探偵物語』とは別物の、松田の「探偵」がここにいる。

願わくば、『探偵物語』がラブストーリーでなく、バディものであったら、と思う。未成年で、中学生くらいにしか見えない薬師丸と 30 代半ばの松田との恋愛は、現在の価値観では「うっ」となってしまう。それに、恋愛のエレメントが、あまりにも余計に感じるのだ。なくても、この物語は成り立つだろう。

松田優作は、わたしが生まれた年に死んだ。ロケ地は田園調布、上智大学など。
shxtpie

shxtpie