カッチェ

ジュリー&ジュリアのカッチェのレビュー・感想・評価

ジュリー&ジュリア(2009年製作の映画)
3.8
感想①「ジュリー&ジュリア」
二人の女性を主人公にした実話映画です。
舞台は第2次大戦後の1949年。ジュリア(メリル・ストリープ)は外交官である夫のポール(スタンリー・トゥッチ)の転勤に伴いアメリカからパリへ。185㎝と驚くほど長身で甲高い独特な声で喋る彼女は、いつも大らかで明るく食べることが大好き。フランス料理を気に入った彼女は、なぜか本格的な料理学校のプロ養成クラスに通うようになる。ジュリアの腕が上達していくことと、彼女が英語で書いたフランス料理の本を出版する為に困難に立ち向かう、それがジュリア側の話の主軸です。

そしてもう1人の主人公がいる舞台は、それから50年後のニューヨーク。30代目前のジュリーは小説家になりたいという夢を断念し、公共機関で9.11の市民相談係を担当し、毎日毎日相談と苦情を言われる日々。友人達の自慢話を聞いて落ち込み、夫との新居もいまいち気に入らない。何もかも上手くいかないことに焦った彼女は、落ち込んだ時にいつも支えてくれたジュリア・チャイルドの料理本にあるレシピ全524点を毎日作り上げ、365日でその全てをブログにアップすることを決意し奮闘する、それがジュリー側の話の主軸です。

感想②「ジュリアの魅力」
まず185㎝の身長。最初はあまりに自然で、あれメリルってこんなに身長高かったのかと思ってしまうくらい周りに溶け込んでいる。そして甲高くゆったりとした独特な喋り方が心地良い。本物のジュリア・チャイルドのようだと誰からも絶賛されたメリルの演技は素晴らしい。私は本物のジュリアを見たことはないが、そっくりだと思えるぐらいの自然な演技なのだ。いつも笑っていて前向きで明るい彼女を観ているだけで、元気をもらえる。辛い過去があっても夫の前以外では弱音を吐かない、太陽のように輝いている彼女が誰からも愛されるのがよく分かる。

政府の仕事に戻りたくない彼女は、主婦業とは別に何か楽しいことをやりたいと色々挑戦し、フランス料理を習うことにする。知らないことを学びたいジュリアは、薦められた主婦クラスでは満足できず、男性生徒しかいないプロ養成クラスへ。だが玉ねぎのみじん切りが上手く出来ず、他の生徒からの冷たい視線と主婦が暇つぶしにやって来てると思われていると被害妄想。そんな彼女は落ち込みながらも、意地になって自宅で大量の玉ねぎのみじん切りの山を築くシーンが可愛い。次の日には、ちゃんとみじん切り出来るようになっていて、生徒の中で一番に作業を終える。嬉しそうにガッツポーズするのが可愛い。
そしてなにより、ジュリアの「ボナペティ(たくさん召し上げれ)」の台詞を聞く度に微笑んでしまう。

感想③「ジュリーの魅力」
ジュリーはジュリアの本や彼女のテレビ番組にどんな時も励まされ、仕事が失敗し落ち込んだ時も料理を作ればストレスが発散できる女性。食べればストレス発散になる人は多くいるだろうが、料理を作ることでストレス発散になる彼女はとても素敵だと思う。365日毎日料理を作り、1年間で全524点をブログにアップするのは並大抵のことではない。母親に「仕事も家庭もあるのにブログまでやり出すのは無計画。あなたが書いても止めても誰も気にしない」という忠告は、関係ない私まで頭が痛くなる。

ジュリーは料理に入ってる卵は平気だが卵そのものは苦手で今まで一度も食べてこなかったり、生きてるロブスターを調理することに恐怖を抱き悪夢を見たり、レシピ通りにやっているのに上手く作れなくて落ち込んだり、毎日苦労しながらも前へ前へと進んで行く。ジュリアと違い、ジュリーはすぐ落ち込んで感情的になり泣いたりするが、そこは現代人らしくて逆に良かった。落ち込もうが泣こうが、そこで簡単に諦めないで前へ進めるのならとても素晴らしいこと。

感想④「メインは料理ではなく、作る楽しさと食べる幸せ」
料理映画は観てるだけで本当に楽しくなりますよね。この映画は、料理シーンでも手元よりも料理を作ってる時の彼女達の表情がよく映ります。食事シーンも同じで、料理よりもおいしそうに食べてる彼女達の表情が中心。そのおかげで、彼女達が本当に料理が好きなんだということが伝わってきて幸せな気持ちに。

感想⑤「実話だからこその難しさ」
まずこの映画はジュリーが出版したブログ本が原作です。つまり映画を観なくても、そこからジュリーのブログが人気になり出版が決まるぐらい反響があったことが分かります。そしてジュリーがジュリアの本や番組を観て育ったことから、ジュリアの本も無事に出版され、アメリカにおいて影響力のある料理研究家になったことも最初の方で分かります。

本来ならジュリーの本が原作なので、ジュリーだけを描けば良い気がします。ですがこの映画はどちらかというと、ジュリアの話が丁寧に描かれ、その合間にジュリーの話が入れられています。最後まで観ればその理由がよく分かります。ジュリアの話を丁寧に描き、彼女がどういう気持ちで、どういう苦労をしながら、フランス料理を知らないアメリカ人向けに料理本を作ったのか。出版までに8年間も費やしたその姿をしっかり描いてるからこその、最後の結末だと思います。この映画はジュリーの本が原作でありながら、ジュリアに始まりジュリアで終わる。そこが監督の演出の素晴らしさと、気遣いだったと思います。

感想⑥「素晴らしい夫婦愛」
なにが凄いって「プラダを着た悪魔(2006年)」のミランダとナイジェルが、その3年後に夫婦役をやってることですよ。雰囲気も見た目も真逆すぎて役者の凄さを改めて感じました。ポールを深く愛し、いつも元気を与えてくれるジュリア。そんなジュリアを同じように深く愛し、包み込むように優しく傍に居てくれるポール。本当にチャイルド夫妻が素敵で、理想の夫婦でした。

また、ジュリー&エリックのパウエル夫妻も微笑ましくて素敵です。共働きで言い争いとかもしちゃいますがいつも彼女を支え、料理が失敗しても励まし、レシピ本ということもあって同じジャンルの料理が毎日続いても完食してくれる素敵な旦那さん。ジュリーは表情が豊かで、時には子供みたいにぐずるし、でも憎めない可愛さ。ラストらへんのジュリーは表情も中身も素敵な女性になっていて、感動しました。
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