広島カップ

四つのいのちの広島カップのレビュー・感想・評価

四つのいのち(2010年製作の映画)
3.9
群れの中の一頭、顎髭を蓄えた思慮深そうな老山羊は考える。
青空を見上げて流れ行く雲を眺めながら考える。

俺達を育てた爺さんは何処に行ったのか?
もみの木の根元で死んで行った生まれたての仔山羊は何処に行ったのか?
仔山羊が永遠の眠りについた場所に立っていたもみの木の大木は切り倒され後何処に行くのか?

イタリアの山間部の村で暮らす山羊を育てる老牧夫が老いて旅立ち、彼の飼う山羊が産んだ仔山羊は群れからはぐれて力尽き、自らの根元で孤独に逝った仔山羊を見守ったもみの木も伐り倒されて炭になる。
美しい山々や村の風景をバックに世の中の移り変わりをセリフ無しで通した本作は、淡々と説得力を持って生き物の生き死にを語る力に満ちています。

冒頭に記した老山羊のショット。彼は顔を上げ野山に吹く風の匂いを嗅ぎながらメェメェと鳴くのでした。
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