滝和也

海外特派員の滝和也のレビュー・感想・評価

海外特派員(1940年製作の映画)
4.2
サスペンスの神様
ヒッチコックの
渡米第2作です。
1940年公開故に当時、
日本では公開されません
でした。プロパガンダ映画
だったからです…。

日本公開は遥かに後、70年代。そのため、知名度も低く日本では評価も遅れましたが、ヒッチコックの作品の中でも一級のサスペンスアクションに仕上がっており、単なる戦争プロパガンダ映画ではありません。個人的にはヒッチコック作品の中でも1、2を争う巧さと楽しい作品だと思います。

海外特派員に任命された、米国の新聞記者、ジョーンズは開戦間近のロンドンへ向かう。平和の鍵を握る大使ヴァン・メアの取材を行うべく、彼は平和活動家フィッシャーの主催するパーティに向かう。そこでフィッシャーの娘、キャロルに知り合う。その場に来たはずのヴァン・メアは欠席。翌日オランダにて会議に入る前、彼の眼前でメアは暗殺される…。

巻き込まれ型サスペンスと呼ばれるタイプではあるものの、海外特派員という立場上、勇敢に陰謀を暴き出す、アメリカの正義を表す主人公が主役。ロマンス、アクションまで取り込んだエンターテイメント作品です。

雨の中、移動しながら街並みを俯瞰したカメラは暗殺場面へ、犯人が逃亡する場面は真上から傘の大群を映し出すそのセンス。そしてカーチェイス、オランダの風車を使ったサスペンス。見つかりそうで、間一髪で逃れる主人公。ホテルの名前を表すネオン管が割れHOTEL EUROPEがHOT EUROPEに変わるユーモア。大聖堂の高所での暗殺者とのスリラー。挙げれば切りがないほどドキドキさせるサスペンスの教科書のよう。

中でも有名な旅客機墜落のシークエンスは白眉。飛ぶ飛行機に接近するカメラがそのまま中に入り込み人物のアップに移行する編集の技。また不時着した瞬間フロントガラスが割れ大量の水が流れ込むカット。荒れ狂う海に放り出されるシーンとこの時代にどう撮ったのか分からないシーンが続く。

この時代、ジョン・フォードを含め、プロパガンダ映画を撮っているが、自分の領域に見事引き寄せ、最高のエンタメに仕上げるヒッチコック。神様の教科書、一度ご覧頂きたい(^^)
滝和也

滝和也