アルフレッド・ヒッチコック監督は、キャリアの前半では母国イギリスで、後半ではハリウッドで作品を撮っています。
両期の特徴を(大ざっぱに)分けると…
《英》・モノクロ
・スター不在
・地味
・引き締まってる(=ムダなし)
《米》・カラー
・豪華俳優陣
・派手
・遊び心満載
…という風に定義したばかりではありますが、何事にも例外はある訳で、本作は渡米して間もない第2作目なので、かなりイギリス時代の特色が残っています。シブいスパイ・スリラーです。
そんな仕上がりになったのも納得の理由があります。
本作が製作されたのは1940年(第2次大戦中)、描いているのは’38年の開戦直前の欧州。
つまり、アメリカに渡ったばかりのヒッチコックにとっては、戦況によってはいつ本国に送還されてしまうかもわからない。
それどころか、もしナチスが勝利したならば、この先映画を撮れるかどうかすら危ぶまれる。
まさに今、コロナ・ショックによって五輪への出場どころか、開催さえ見通せないアスリートのみなさんの心境に近いのかもしれません。
そんな、必死のヒッチの入魂の一作、ぜひご堪能あれ。