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狼たちの午後のblacknessfallのレビュー・感想・評価

狼たちの午後(1975年製作の映画)
4.0
何でもかんでも低評価やツッコミどころと称してどうでもいい粗を探して自身の鑑賞眼を誇示するようなレビューばかりアップしてる人を見ると映画レビューでたいそうな人間だと思われたいんじゃないかと疑いたくなる。何故こんなことを言うのかと言うと、居たからなんだ、そういうのが。

彼はプロフに書いてるとおり鑑賞本数もかなりなものでジャンルも様々な映画を観てるんだけど、ほぼほぼ否定的な見解と“ツッコミどころ”を並べただけの熱量も愛情も感じられない短文のレビューをアップしてる。“詳しくはブログを見てください”とURLを貼って自分のブログに誘導してるんだけど、そんなに短いのならTwitter(現X)に全文入るじゃんかよってズッコケた。それだけなら可愛げがあるとも言える。けど、つけてる点数が尋常じゃないぐらい低いのばかり。あまりにサムすぎるそのスタンスに悪い意味で惹かれて(見たことないゴミ山を見て嫌悪感より好奇心が勝ってわざわざゴミ山をかけ分けてしまう衝動みたいなもん)半分ぐらいチェックしたら本作も見事に低い点数だった。
でも、自分の好きな映画を低評価したからそいつがサムいって言いたいわけじゃない。おもしろかつまらないかなんて主観の差でしかないから。サムいのは「有りがちな設定と展開で退屈」と本作を評してたところ。これはちょっと的外れにもほどがある。何故ならば、本作ほど定型からハズレた銀行強盗映画もそうそうないから。

借金まみれの切羽詰まった男が仲間と銀行強盗を計画し予想外の自体から立て籠もりを余儀なくさドツボにハマるプロットは確かに有りがちだが、その予想外の自体ってのが見張り役の若造が強盗決行直後に「あ、おでぇ、やっぱ無理かも😥」「帰るね😖」と日和だし本当に帰っちゃうんだよ!そんな銀行強盗映画、これ有りがちか?他にあんのかそんな映画?おれはこれしか知らないけど笑
それと、主犯のソニー(アル・パチーノ)の犯行動機が恋人である今で言うトランス女性の性転換手術代を得ること、これが警察との交渉でマスコミの知るところとなり、ソニーは今で言うLGBT界隈のヒーローにされ銀行の周りを支援者達が取り込み銀行周辺は異様な熱気に包まれる。これのどこが有りがちなんだよ!他にねぇだろって笑
だから、その自称鑑賞眼高い彼氏は実は映画ちゃんと観てないじゃないのか?若しくは観る力が致命的に無いんじゃないかと思うんだけど、どうかな?

だいだい彼氏は退屈と言ってたけど、本作は名匠シドニー・ルメットの硬質でサスペンスフルな演出が冴え渡り終始クリフハンガー状態が続きスリリングなんだよ。ソニーは根が善人だから人質を優しく扱うし、逃げる若造をあっさり帰す。強盗に徹しきれない甘さから四苦八苦する姿に人質の銀行員達が同情して妙な連帯感が生まれる。それもストックホルム・シンドロームのような過度な感情移入ではなく、「キミ(ソニー)がモタモタしてるからだよ 早く逃げろと言ったのに」と頼りなさを指弾する温度。ダメな子ほどかわいいから放っておけないと言った感じの心的距離、この銀行員達の関係性もかなり特殊。アル・パチーノの演技もいい。この精神的にひ弱で善良なソニーが必死に悪党なり切ろうとしてもなり切れず地である人の良さが顔を出してしまう滑稽な悲哀をアル・パチーノが見事な演技で表現してる。『スケアクロウ』のフランシスと『スカーフェイス』のトニー・モンタナを行き来する。
そして、クドいようだがまったく有りがちではない。驚くことに本作は実際にあった事件がモデル。仲間のキャラの改変はあるが大枠で全部事実なんだよ。実録モノと言える。繰り返すがつまらないと感じても有りがちと断じる要素は皆無に等しい笑
そんなわけで本作好きで数回観てるし、別にレビュー書く気はなかったけどチンケな奴の自己顕示欲のために貶められたのを見てムカついたし真に受ける人がいるといやなので、奴のレビューがいかにテキトーで信用できないものであるってことと、本作が有り得なさの塊の銀行強盗映画の傑作だと言うことを記したくなったからレビューすることにした。

あと、ソニーの恋人のトランス女性が病気扱いされ精神病院で薬物療法を受けてることに時代を感じた。犯人はゲイと報道されソニーの相棒のサルが俺はホモじゃないとマスコミに訂正させろと激昂してソニー詰め寄るシーンとか。当時のゲイやトランスの人達がどう見られて扱われていたかがわかる。そういう方面での資料的価値もあるかもね。
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