ひろ

狼たちの午後のひろのレビュー・感想・評価

狼たちの午後(1975年製作の映画)
4.0
監督シドニー・ルメット、主演アル・パチーノによって製作された1975年のアメリカ映画

第48回アカデミー賞で脚本賞を、第29回英国アカデミー賞で主演男優賞を受賞した

実際に起きた銀行強盗事件を題材にしたこの作品を監督したのは、「十二人の怒れる男」などの骨太な社会派作品で知られるシドニー・ルメット。数々の映画賞で監督賞にノミネートされながら受賞できなかった、無冠の名監督だ。この銀行強盗事件を題材にした作品は、当時のアメリカ社会を映し出している。

銀行強盗の立て籠りなんていう作品は散々観てきたが、ほとんどはこの作品のコピーみたいなものだ。犯人の深層心理を浮き彫りにする描き方は見応え充分だ。原題の「Dog Day Afternoon」は「盛夏の午後」という意味だから、邦題は完全に誤訳なんだけど、なぜか上手いこと作品にフィットしているから不思議だ。

犯人に似ているからとキャスティングされたアル・パチーノ。監督とは「セルピコ」に続いてコンビを組んだ。この時期のアル・パチーノはのりにのっている。この作品はほとんど役者のアドリブで演技をさせているらしいが、アル・パチーノの存在感がすごい。

サル役を演じたジョン・カザールもよかった。饒舌で人当たりのいいソニーに対して、科目で取っつきにくいサルの存在が緊張感を産み出していた。「ゴットファーザー」などの名作だけに出演して、病気で亡くなった隠れた名優だ。

「アッティカ!アッティカ!」という名台詞で盛り上がるシーンがあるが、これは日本人には馴染みのない言葉だろう。アッティカ刑務所暴動を指していて、警官の横暴を批判している。こういう意味を知るのも、映画の楽しみ方のひとつだと思う。

犯人の動機には驚かされるが、実際の犯人はこの映画の収益によりその目的を果たしたらしい。動機を知りたい人は、映画で確かめてもらいたい。社会派作品といっても堅苦しいわけじゃなく、緊張感のあるクライム・サスペンスなので、アル・パチーノにお任せください。
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