めしいらず

狼たちの午後のめしいらずのレビュー・感想・評価

狼たちの午後(1975年製作の映画)
3.8
杜撰な銀行強盗計画は最初から足元が覚束ない。それは人質らに心配されてしまうほど。もたついているうち事態はあっという間に大ごとになり引くに引けなくなってしまう。止むに止まれぬ犯行。誰も傷つけたくはない。暴かれる彼自身の生き樣。非情になり切れない心の優しさは弱さでもある。だから彼は今ここにいて窮しているのだ。社会はあぶれ者に冷たい。不満を抱えた若者らにひと時祀り上げられるけれど、彼らは対岸にいるままだ。最初から失敗が約束された計画はその通りになる。彼が最後に見たもの。連帯意識を感じ合った筈の人質らは、終わった途端に彼のことなど見向きもしない。決定的な孤絶感が浮き彫りとなって映画は幕を閉じる。可笑しみと悲哀のさじ加減が絶妙な社会派サスペンスの傑作だった。
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