テイアム

エクソシストのテイアムのレビュー・感想・評価

エクソシスト(1973年製作の映画)
4.9
もはや説明不要のカルトホラー。
その当時の人気ぶりは大統領でさえも席が取れないと揶揄されたほどだったそうだ。
公開から約40年経った今、他の作品とフラットに観ても古さは感じない。
印象的なテーマ曲とは裏腹に、劇中にはほとんどBGMがなく、幸せな親子の転落を軸として、カラス神父の不安と、メリン神父と悪魔の対決までの過程が静かに描かれる。
本作にはいわゆるマイケル・ベイ的な演出は皆無であるが、彼らが得体の知れない悪魔に徐々に翻弄されていく様は観るものの不安を嫌と言うほど掻き立て、我々の解釈不能の恐怖を物語の最後まで強力に牽引する。
初めて観た時は、両親が寝静まった夜中2時のリビングで、ヘッドホンを使用しての鑑賞だったのだが、あまりの恐怖に『早く終わってほしい』と本気で思ったものだ。
後にも先にもここまで震え上がったのは初めてだったし、ホラー鑑賞の良い基準になった。それ以降ホラーはできるだけ同じ環境で観るようにしているが、未だ本作を超えるものは無い。

エクソシストは“スパイダーウォーク”、“首の180度回転”、“少女の卑猥な言動”など劇中のインパクトある画とともに、制作秘話も事欠かない。
数々の武勇伝を持つ名匠ウィリアム・フリードキン監督は、俳優ジェイソン・ミラーが電話の音に驚く表情を真に迫ったものとしたいが為に、セットの裏で突然拳銃(空砲)ぶっぱなして、びっくりした反応を隠し撮りしたそうだ。しかも驚いた共演のマックス・フォン・シドーも監督のやり方に怒ったが、懲りずにまた同じ事をやるという、作品の雰囲気とはまた異なる激しい舞台裏だったようだ。
しかし制作秘話として最も特筆すべきは当時40代で若かったメリン神父役のマックス・フォン・シドーを特殊メイクでヨボヨボのおじいちゃんに変身させたディック・スミスの技術の高さだろう。
その後の『エクソシスト2』ではマックス・フォン・シドーが若かりし頃のメリン神父として特殊メイクなしでそのまま出演しているが、意識して比較しなければこの「続編の方が若い」という違和感に気づく事はまず無い。初めて本作を鑑賞してから最近の作品に至るまで、『そう言えばマックス・フォン・シドーって全然歳取らないよね』と思っていたものだったが、今の本人と特殊メイクを施していた当時と殆ど変わらないところに、ディック・スミスがいかに骨格や筋肉の付き方等、美術解剖学的知見に裏打ちされた本物の技術を習得していたかが分かる。

また映画の評価を超えて現実の事件にも多大な影響を及ぼした作品としても名高く、映画公開以降、自分の娘息子の反抗期を悪魔付きと思い込んだ両親が自分勝手な悪魔祓いを施して死に至らしめる等凄惨な事件が相次いだことで『悪魔』や『悪魔祓い』の存在を広く認知させた歴史的にも稀有な作品で、スキャンダラスなバックボーンもこの作品の不気味さの一部となっている。
人死にを出した事は悲しい話だが、それだけ人を狂わせる『力』を秘めた作品である事は間違いない。