日本初のトーキーだそうで、フランスのルネ・クレールのオマージュも見られて良かった。
『パリの屋根の下』の口笛や、本作に登場するマダムの容姿が『パリの屋根の下』のポーラに似せているのも面白い。マダムはフランス語である。
この時代いかに日本の映画人たちがフランス映画を見ていたかがよくわかる。当時の日本にとって外国映画はハリウッドではなかったのかもしれない。
ルネ・クレールを研究したのがよくわかる演出が多く、騒音に悩まされて原稿が進まないというシークエンスでは、ネズミ、猫、ジャズ演奏を見せない、むしろ"聞かせる"演出が冴えている。逆に、耳元で囁くなど、あえて"聞かせない"演出も見られる。
日本風の女房を持つ脚本家が隣の家のマダムと軽快なジャズ演奏に束の間心を動かされるという話で、日本と欧米の対比がなされている。
冒頭で画家を登場させているが、その後一切登場させないところが若干不満で、展開もあまりなく、終わった時「え?これで終わり?」と思った。