垂直落下式サミング

スパイダーマン3の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
4.0
要らん知恵がついてからは、敵が三人になったことで前二作よりも散漫になったなんてネットの受け売りでほざいた時期もあったけど、アクションのパターンがたくさん増えて楽しい作品だと思う。
今回、確かに敵はイマイチ。グリーンゴブリンとドクターオクトパスは、コミック掲載初期からいるクラシカルなマンガの悪者っぽさがよかったんだけど、今回の人たちは小賢しくてあんまり好きじゃなかったな。
スナスナの実のサンドマンは、倒しかたとか戦いかたにトンチが必要なタイプで宿敵ってほどじゃないし、ゴブリンジュニアは、連載中に人気キャラが死んだからまた同じの出した風な二番煎じキャラだし、ヴェノムに至っては、ヒーローのダークサイドを可視化したような現代的な悪のあり様を担わされていて、これがサム・ライミの前二作のどこか牧歌調な雰囲気にマッチしない。
でも、金曜ロードショー世代だから何回もみてるし、ラストでは因縁とか友情とか必要なものが全部回収されて三部作が幕を閉じるから、やっぱ好き。
サンドマンは、最後ピーターに許されてもう二度と悪いことしないと改心したから、砂になって朝日のなかに消えていったんだと思ってたんだけど、マルチバースで引っ張り出されてまた敵に戻っちゃったのは嫌だったなあ。
これ、やっぱちょっとサム・ライミ版に対して無礼って言うか、ギルティな歴史改変だろ。御都合時系列でパラドックスな感じ。そういうとこだよね、ノーウェイホームくんさあ…。
一番好きなのは黒い服でダンスするとこ。宿主を精神腐敗させる宇宙生物に寄生されるのに、道行く女の子の前でイキり散らして、いつも高圧的な上司にちょい強気に出る程度で済むのは、ピーターが普段からどれほどの善人なのかわかるいいシーン。
三部作通して、親友役のジェームズ・フランコは、友情と怒りに苛まれる男の心情を演じきった力のある役者だったと思う。前作では、顔のかたちが長方形だったから、四つの角の値がすべて等しいことで安定感を醸していたけど、今度は頬をやつれさせた逆三角となり、不安定な精神状態の若者を見事に体現していた。
好きなところと嫌いなところがちょうど半分くらい。それが交互に連なってる。花占いみたいな最終作。