あまのかぐや

スパイダーマン3のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

サム・ライミ版ラストです。

ヴェノム!あなたヴェノムっていうのね?!(千と千尋)




今回はサンドマンとヴェノム、それからゴブリンジュニアと、最終作だからなのか、3人も重たいヴィランを贅沢にも盛ってしまい、ちょっと話がとっ散らかってしまったような気がします。

アクション以外の、ストーリーパートがまた、すごいボリューム(笑)肉三種がメインのフルコース、前菜にこってりパスタ、デザートも三種類ありますが全部どうぞ、ぐらい重たい。・・・い、胃薬を。

サンドマンとベンおじさんの事件。特ダネを追う記者・エディブロックの話。MJへのプロポーズ(笑)ピーターの闇落ちや、極めつけはごく短い時間にハリーの記憶喪失~記憶復活という、究極の美味しい設定まで盛り込んでしまい、これを120分そこらの作品によくぞおさめたもんだ、と感動してしまいます。いやほんとすごい。何を書いたら良いのかわからない。

一言でまとめてしまってよいのでしょうか、という気もしますが、善と悪とは紙一重。ここまで愛すべき隣人に徹してきたピーター=スパイディも、ひょんなことでブラックスパイディに堕ちるし、ヴェノムもサンドマンも元は、良き父、有能な記者であろうとした。小悪党だったかもしれないけど、大それた悪事なんておもってもみなかった。

それがひょんなことから「悪」の心につけいられ、普通の人であった部分が飲み込まれてしまった。

誰が悪いわけではない、自分の心の中での戦いで飲み込まれた。善悪の曖昧さ。「善って実は」「悪って実は」と、裏側を透かし見せる。

1のノーマン親子も、2のオクタヴィアス博士も、考えてみればごくごく普通の人。名声を求めたかもしれないけど、まずは世界のため人のやらない科学や技術の進歩を夢見ていた。そこにあった心の隙や弱さに、簡単に悪は育ってしまうということなのかなぁ。




しかしここまで3作にわたってMJがダメダメダメ書いてきましたが、ふと立ち止まって、脚本というか制作する側自体がMJを敢えてクソ女に見せたがってるような、観客に嫌わせるように仕向けてる気がしてきました。MJ時々すごいおブス顔見せるけど、雰囲気美人だし。

(記憶喪失のハリーがニコって笑うとなんか幸せになるのですが、MJとハリーお料理シーン。なんかこのシーン、イラっとするんですよね、わたしだけかなあ)

だって、今回登場したグウェンちゃんがほんとに良い子なんですもの。顔もかわいいんだけど、それだけじゃなくて、警察署長の娘という立場なのに、育ちがよさが性格に反映してるのかほんとに良い子。

ピーターとMJのもだもだした仲もちゃんとわかってるし、そこにつけこんで、邪魔しようとしたり、二人の仲をどうこうしようという訳ではない。

ピーターがわざとMJが働いてるお店にグウェンを連れて行って見せつけるような行動した時もMJに心から同情して素直に謝ったり・・・

グウェンちゃんをみたら、決して女性キャラクター=うざい、むかつく、邪魔、って思わせたくて配置しているわけではない、と思ったよ。

(って、改めて見たらこの子、ブライス・ダラス・ハワードじゃないですか!うわあ、びっくり)

ヒーローが愛するヒロインが、男のなすがままの万人に愛される可愛い子ちゃんじゃなくたっていいじゃない!っていうね。

「ピーター、おまえその選択明らかに間違ってるぜ」と「良いこと悪いこと」の境目を曖昧にするため、見る側にMJを嫌わせるようにしむけているのかな、って思い始めた。いや今ふと思っただけですがwww




最近のMCU映画の女性を見ると、ヒーロー映画は男の子だけのものじゃないよっていう時代の考えが伝わってくる。

現代を生きるヒロイン?ヒロインっていう言い方も古いかな?

当時は、時には足手まとい、ときには守られるだけの存在、時には敵に捕まって吊るされたり、縛られたり、ぴらぴらのスカートで太ももや胸元見せて楽しませる要員だった女の子は、ヒーロー映画が男の子だけのものだった時代の話。

女の子もヒーロー大好きだし、ヒーロー好きだから彼に守られたいって思うより、ヒーローと一緒に並んで戦いたい!って思う時代を反映しているのかな?って思う。

なにより一番感じるのは、ブラックウィドウやガモーラやオコエ、勇ましくヒーローと並んで戦うキャラクターは実際、女の子にも人気だし、女の子のファンを引っ張ってるような気がしてる。

アイアンマンのペッパー・ポッツも、キャプテン・アメリカのペギー・カーターも、ただのキレイな「彼女」役ではない。そしてそれは、新スパイダーマンの無愛想で皮肉屋のMJしかり。

ワスプはアントマンまもっちゃうし、間もなく、キャプテンマーベルの公開も控えている、ね?そんな時代。




ここまで言っておいてなんですけど、MJはさておき、キルステン・ダンストは良い女優さんだと思ってるんです。はい。

こんなに「嫌な女!」と思わせるMJ役を、思い切り入り込んで演じてる役者魂はとても素晴らしいと思う。最近みた「Dream」でも、良い感じに年を経た見た目も、「黒人の貴方を理解してるのよ、といいつつ無意識差別している白人」、良い人に見えて一周まわって嫌われるような複雑な役は、「さすがキルステン!」と思いましたし(そういえばブライスダラスハワードも「ヘルプ」でそんな役でした)




ヴェノムの予習のつもりで見始めたサム・ライミ版3部作でしたが、久しぶりに見てもぜんぜん古く感じない、むしろ何度見ても発見があったり、初見と違った面白さが生まれる。

宇宙から来た黒いずるずるした生き物「シンビオート」が、宿主の精神に呼応して、元からあった闇の部分を育てる、という理解で正しい?シンビオートが寄生したピーターに重点おかれていて、そのあと移動したエディの印象が薄くて、ヴェノムの姿を見せるも、そのあとのハリーやサンドマンの名シーンに持っていかれ、なんだかかわいそうなんですが、それはもう仕方ないよね。これだけのボリュームなんだもの。

でも「ウルヴァリン」で、ちらっとぞんざいに扱われたデッドプールちゃんが、あとになって花開いたように、今回ヴェノム自身も一本立ちして見事に開花してくれるはず。

トム・ハーディ演じるエディ・ブロック、すごく楽しみだし、新ヴェノムを観た後にこの「3」をみたら、また別の面白さが生まれてるかもね。
あまのかぐや

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