切ない。
銀行に家を取られてしまった老夫婦が息子と娘の家に分かれて世話になる話。
息子や娘たちには今の暮らしがある。仕事がある都会で働くためにはそんなに大きな家に住めるわけではない。稼ぎが足りなければ夜も副業に追われる。
そんな暮らしの中に老父や老母が溶け込めるはずがない。だから心を寄せ合う必要があるはずなのに、それをしない。お互い強情なのだ。
終盤、老夫婦が二人で出かけた先で出会う人たちは二人に心を寄せているように見える。しかし、それらは彼らの商売上の振る舞いなのだ。「お客さま」に良い気持ちになってもらうための商売上の戦略なのであり、一人の人間として心を寄せているわけではない。
子どもたちに厄介者扱いにされ、優しくしてくれる人は財布の中身を狙っている。なんという切ない世界だろうか。
老夫婦が若い時代を思い出しながら街を歩くシーンは強烈な印象を残す。二人の甘い世界を描き、救われた気分になったが、非現実的にも映った。もう、その時代は終わった、と古い人間に突きつけているようだった。やはり、切ない。