みかんぼうや

スカーフェイスのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
3.7
【アル・パチーノが主演の長編マフィア物、という時点でどうしても逃れられないコルレオーネ家の呪縛。それでもやっぱりアル・パチーノが凄まじい!】

約3時間の長編映画は、やっぱり観るのに気合がいりますね!ということで、観よう観ようと思い続けてかれこれ2年、気持ちに余裕のある先日の三連休を使ってようやく鑑賞。

面白い作品でした。面白かったのですが、フィルマの総合点★4.0にちょっと期待し過ぎたのと、3時間近い長編でアル・パチーノ主演のマフィア物で、おまけに頂点に立つ男が次第に周りへ疑心暗鬼になる姿を見させられると、異なる設定とストーリーと頭では分かっていても、どうしても比較しちゃいます、コルレオーネ一家を描く大好きな“マフィア映画の最高傑作”と。

このコルレオーネ家の呪縛は本当に重いです。「グッドフェローズ」くらいテイストの異なるマフィア映画であれば、「ゴッドファーザー」と比較することもないのですが、やはりアル・パチーノ主演でこのストーリー展開となると、嫌でも意識してしまいます。あちらはマフィアの超良血サラブレットなら、こちらはゼロからの成り上がり者なので、入り口としては対照的であることも分かっているのですが。後半の疑心暗鬼モードでボロボロに疲れ果てて椅子に座るアル・パチーノを見た瞬間に、「マイケルやん!」と心の中で突っ込んでいました。

要するに、マフィア映画としては普通に面白いのですが、「ゴッドファーザー」と比較してしまった時点で、物語性、芸術性、スケール感、人物の背景、その他の演出がどうしても全体的に小ぶりに見えてしまうのです。

加えて、アル・パチーノ演じる主人公トニーが、最初は冷静沈着ながら、権力を掴むあたりから一気に短気で視野が狭まり感情だけで動いていくようになっていく。その変化も見どころなのでしょうが、やはり形はどうあれ“ファミリーのために”いう意志を持ちながら偉大なる父の存在に苦悩し続けたマイケルに比べると、トニーの自己中心性が際立ち、人間性の深みが感じられませんでした。まあ、本作は“ファミリーの絆”的なテーマではないので、一人の男の立身出世と盛者必衰の物語として純粋に楽しめれば良いのでしょうけどね。

ただ、そのアル・パチーノの後半につれてどんどん感情的になっていく演技の熱量と迫力はさすが!の一言。個人的には物語そのものよりも、彼の演技が一番の見どころで、アル・パチーノだからこそ約3時間ぶっ通しで飽きずに観られたのかもしれません。アル・パチーノだから「ゴッドファーザー」を思い出すのに、アル・パチーノだから見応え十分だった、というジレンマです。

「アンタッチャブル」を観たときにも感じたのですが、おそらく、デ・パルマ監督の作品の作風は、自分にはあまり合わないのだろうと思っています。どちらも面白いですし(「アンタッチャブル」は話自体はとても好きです)、スローモーションなど印象的なシーンもいくつかあるのですが、特にマフィア物には緊張感と人物背景の深さを強く求める自分としては、本作は正直なところ、電子音強めのいかにも一昔前の音楽や“やり過ぎ”感の強い演出も相まって、エンタメ的ではあるものの、緊張感や人物背景の深みを感じられませんでした。

とはいえ、同監督で同じくかなりl高評価な「カリートの道」は、本作同様、ずっとマイリストに入れていた作品ですので、今年中に観てみたいと思っています。
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