「モブ・マフィアもの」の典型的な展開を見せていく作品だが、何処となく憎めない人間臭いキャラクター=トニーを演じるアル・パチーノに引き込まれる。監督のデ・パルマらしい映像演出や、自身もコカイン中毒を克服しながら完成させたというオリバー・ストーンの脚本のきめ細やかさにも感じ入る。
ボスの女エルヴィラ(ミシェル・ファイファー)をトニーが口説いていく描写は彼のステイタス上昇の表れでもあったし、俳優アル・パチーノが漂わす男の色気も加わってとても魅力的。エルヴィラの隣りに座りボスのフランクを挑発するトニーの表情がリアルで印象的。
対するミシェル・ファイファーは、序盤にダンスフロアでトニーと喋りながら踊るエルヴィラのダンスが素人っぽくて愛嬌があった。でも正直にいうと、このエルヴィラよりもトニーの妹ジーナの方がずっと存在感があり、メアリー・エリザベス・マストラントニオの演技に吸引力があった(本作が映画デビュー作品)。また、フランクの手下オマールをF・マーリー・エイブラハムが演じていて目が向いた。
今見ると"The World is Yours"の演出はちょっとあざといかなぁ。シンセ・サウンドの劇伴もチープで古臭い。今作は何といってもアル・パチーノの男の色気に尽きると思う。