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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)のmimicotのレビュー・感想・評価

3.8
実在したイコン画家アンドレイ・ルブリョフの苦難の人生を、10のエピソードで積み重ね、時代に生きる人々と共に描いた見応えある大作。

人の多さ、残虐さにはこれがタルコフスキーなのと驚く一方で、彼のモチーフである雨、炎、川、犬などの美しい映像には監督が創り上げた作品だといつも通り感動しました。

ルブリョフが筆を置く原因となった異教徒の猥雑な祭は、「ウィッカーマン」にも出てきましたが、このような宗教は世界中にあったのでしょうか。
松明の炎、白いドレスを着た大女、裸...ルブリョフと共に、奇妙な世界に引き込まれるエピソードでした。

気になったのが、異民族タタール人の侵攻。黒澤明監督作品を観てるのかと錯覚する。
その中の一人のモンゴル人男性が、民衆を襲いながらずっと笑顔なのは何故?地顔?いや笑っている。
そういえば、日本人はどんな時も笑って受け応えるのが怖いと、海外で聞いたことがある。
タルコフスキーは、黒澤明と溝口健二に傾倒していましたが、彼にも日本人がそのように見えていたのでしょうか...。勝手な解釈だけどちょっとショック。

最後のエピソード「鐘」は、少年が責任を背負い、生きるチャンスを得ようと奮闘する姿がとても美しく、響きわたる鐘の音は圧巻で涙を誘うほど感動的でした。

本作でタルコフスキーは、ルブリョフと鐘作りの少年を通して自身を描いていたようにもみえました。監督の芸術への想いの深さに更に感動した作品です。
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