茶一郎

レジェンド/光と闇の伝説の茶一郎のレビュー・感想・評価

レジェンド/光と闇の伝説(1985年製作の映画)
3.8
 一つ一つの画に命をかけた、最高の映像美を誇るファンタジー映画。
 『エイリアン』、『ブレードランナー』と、映画史を動かす金字塔を二作続けて作ったリドリー・スコット監督がその次に撮った作品が、本作『レジェンド』でした。しかし蓋を開けて見ると、興行・批評的にも惨敗。しばしば話の単調さと、何にも役に立っていないトム・クルーズ扮する主人公が笑いぐさにされてしまう作品です。

 とは言うものの、転んでもタダでは起きないリドリー・スコット大先生。『エクスカリバー』も手掛けたニコラス・ローグ監督御用達の撮影監督アレックス・トムソンの撮った美し過ぎる画作りはもちろん、何よりも悪役の闇の魔王の造形が最高なのです。「映画の悪役BEST〇〇」等々に毎回、顔を出す「闇の魔王」は天才ロブ・ボッティンの見事なお仕事の成果。個人的に『遊星からの物体X』のクリーチャーに引けを取らないインパクトを残しています。

 物語の単調さは、ストーリーの型を超王道な「ザ・お伽話」に沿っているから仕方がないとは思いますが、事件の元凶が、お姫様の好奇心によるものであるという点は非常に現代的。本作における「魔法」を「知識」に置き換えると、本作のプリンセスはディズニー・アニメ『美女と野獣』のベルそっくりで、まさに『美女と野獣』以後の、自らの欲望に純粋な現代的なプリンセス像をしっかりと継承しているように思いました。

 いやはや、一から十までとにかく美しい。いっその事、「動く絵画集を見るか」くらいの意気込みで美しい映像に浸かりたいものです。
茶一郎

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