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突然の恐怖のmat9215のレビュー・感想・評価

突然の恐怖(1952年製作の映画)
2.5
ジョーン・クロフォードとジャック・パランスの幸福なカップル!我が目を疑うような地獄のカップルがイチャつくだけで不穏感が醸し出され、中盤で観る者の黒い期待通りに裏切りと復讐の物語が展開される。

後半は、何よりもジョーン・クロフォードのクロースアップが恐ろしい。憎悪とか怒りとか不安がデカイ眼から圧倒的なパワーで放出される。とくに強烈なクロースアップは、復讐の企てのタイムテーブルを確認するところ。眼を見開いたクロースアップに時計の振り子の影が投じられ、そこに企ての予想映像がオーバーラップし、振り子の動きに同期した時計の音が響く。ここだけ見たらホラー映画ですよ。眼の力がほんとに恐ろしい。ながーいクロースアップショットで一度も瞬きしないのは流石にプロ。その後の場面では、企てが予定通りには進行せず、眼を見開いた顔に汗が流れ落ちる。これはもうマンガで緊張を示す記号としての汗と同じ。

本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされたそうだけど、今観ると怪演の域に入っている。そういや、ジョーン・クロフォードの最後の出演作『地底の原始人・キングゴリラ(Trog)』はテレビで観たことがあって、地底の原始人よりもジョーン・クロフォードの方がはるかに怖かったと記憶している。

演出はクリシェやツボは押さえている。カメラのスムーズな動きとか、ロー/ハイアングルの駆使は、監督の指示なのか、当時のスタジオシステムで鍛えられたスタッフの技量なのかは分からない。ただ、こうした小技が映画にあまり寄与していない。
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