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裸の島のmuraのレビュー・感想・評価

裸の島(1960年製作の映画)
4.7
衝撃。魂が震えるとはこういうことか。

午前10時の映画祭。この作品を大きなスクリーンで見られるとは。ありがたい。

夜も明けないうちから船をこぐ夫婦。本土に渡って水をくみ、島に持ち帰るため。島に住むのは夫婦と2人の子供だけ。山の斜面を切り拓いて作物を育てるが、この島には水がない。そこで毎日何度も本土に渡り、水をくんでくる。そして畑にまく。大切に、大切に。

夏から秋、さらに冬、春、そして夏へと、こういった作業がひたすら続く。セリフもなく、見ていて陰鬱な気持ちになる。

しかし、それを不幸とするのはこちらの感想。家族にとってはそうでもない。幸福な時間も訪れる。祭りであったり、街での買い物であったり。

ここ数十年で日本人の生活や価値観は大きく変わったんだな。あらためて思う。

最後、家族に大きなことが起こる。これは映画ではしばしば見られること。でも、それまでに見せられた家族の毎日の生活があるからこそ…それはあまりにも衝撃的で、そして悲しくて、虚しくて…

耕して天に至る…人間はたくましい。同時にはかない。それでもやはり、たくましい。「人間」が描かれた本当に、本当に素晴らしい映画。
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