こたつむり

トゥモロー・ワールドのこたつむりのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
4.0
★ 小さな手を握る歓びに勝るものはなし

外はカリッと中はジューシー。
美味しいタコ焼きのような作品でした。
“子供が産まれなくなった近未来”というハードな世界観なのに、根底に流れるのは“優しさ”なのです。

このギャップは見事ですね。
本作を仕上げたのはアルフォンソ・キュアロン監督。代表作に『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』や『ゼロ・グラビティ』がありますが、それらの作品に匹敵するほどの硬質な臨場感でした。

特にクライマックス直前の展開は圧倒的。
まるで自分がその場にいるような…いや、確実に僕は2027年のイギリスに“居た”と思います。目の前で銃弾が飛び交い、爆発音で耳が痺れ、砂ぼこりで目が痛くなる…そんな感覚に襲われましたからね。

これは大胆な決断と細心の配慮の成せる業。
特にそれは音楽の使い方に顕著でした。
大音量で楽曲を流しても、アーティスティックな感覚を前面に出しても、嫌味じゃないのです。このバランス感覚が無ければ、きっと本作の着地点は大きく曲がっていたと思います。

また、人物描写も良い按配。
少々、説明調の台詞が目立つところもありますが、違和感なく物語に溶け込んでいました。だから、自然と主人公とシンクロし、彼を応援したくなるのです。

まあ、そんなわけで。
上映時間が2時間未満とは思えないほどに濃密な物語。近未来を舞台としていますが、ゴリゴリのSFではないので(というかSFは撒き餌)敷居は高くないと思います。コッテリとした映画をお探しのときにはオススメです。

特に「保育園建設反対」と狼煙を上げる諸先輩方には、是非とも鑑賞して戴きたい所存。僭越ながらに、命を繋ぐことの大切さを再認識してもらえたら…。極論かもしれませんが「子供は宝」だと思いますよ。

最後に邦題への文句を。
正直なところ、フィルマークスで知るまでは、本作のことを“千葉県の片隅にあるネズミ王国の一部”と混同していました。そのくらい没個性的なタイトルですよね。内容は秀逸なのだから、原題で勝負すれば良かったのに…。