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静かなる決闘のSNのレビュー・感想・評価

静かなる決闘(1949年製作の映画)
3.9
葛藤と闘争、黙示と発露、理性と狂気。

戦争が残した数々の軋轢。相いることのない決然とした二律背反の中で、困難を抱えながら生きる人たち。お互いに歩み寄ることも、離れることもできず、ただ歯をくいしばるか、さめざめと泣き明かすか、声を荒げることしかできない。物語がたとえ進行しようとも、この悲痛な関係性は常に保存され、好転する兆しもない。

こうした悲しい世界の中で、衛星のように流動的に動き回り、人と人とを結びつけ、そして、何よりも決して下を見ずに、ひたすら歩み続ける看護師、峰岸。彼女の存在感は、ある意味で若き三船のカリスマ性に勝るものであり、この作品には必要不可欠である。
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