ちろる

八月の狂詩曲(ラプソディー)のちろるのレビュー・感想・評価

3.8
ちょっと、原爆による悲劇において、リチャード ギアを広島によこして謝罪をさせてしまうというやりすぎ感もあってら押しの強い演出は少し苦手ではあった。
流石晩年のクロサワはなんでも有りだったのね。
亡くなった子どもたちのモニュメントが飾られる校庭に走って入ってくる子どもたちとか、何事もなく路面電車が走る広島の街並みのシーンとか、バラにまとわりつく蟻の行列とかなんかどうでもないシーンの方が秀逸でグッときてしまった。

恥ずかしながら私は未だに広島にも、長崎にも足を踏み入れたことがない。
映画とかテレビとかで語り部の方の話は聞くようにはしているけど、やはりこの物語の子どもたちのように身近な存在が原爆の直接的な被害を受けている方はもっと深くリアリティを持って後世に伝える事が出来るのだろう。

子どもたちがしきりに、「なんか怖い」と言っているのが印象的で、私も子供の頃に原爆に関わる児童書を学校とか親にいくつも読まされたのだけど、その時に思ったのがやっぱ「なんか怖い」だった。
霊の存在とかそういうのは分からないけれど、一瞬にして命を落とした人たちの想いとか、残り香みたいなものはこどもだからこそ敏感に感じる事ができるのかな。

この怖いという感覚だけはいつまでも忘れない。
いまの子どもたちは、もう身近な人に戦争体験者がいないから、この作品を観ても遠い過去の話としてしか受け止められないのかもしれない。
ただ、このなんか怖い。この感覚をこの作品の子どもたちと共に感じて欲しいか、子どもたちに味わいながら観て欲しい。

どうでもいいけど、おばあちゃん連れてみんなでパイナップル畑行って欲しかったわ。
ちろる

ちろる