寅さんの大仰で鮮やかな口上が心地良い。
特に叩き売りをしているときのそれは芸術的です。
惚れた女の人と話すときに口上風になるのも面白い。
この口上があるために、情に脆く荒っぽい中にも知性と教養を感じる不思議なキャラクターが出来上がっているのだと思います。
この魅力は寅さんだけのもの。
音楽も郷愁を誘います。小さい頃から耳馴染みがあるのも相まって、柴又は自分の故郷でもなんでもないのに懐かしく感じます。
映画として完璧だとは思いませんが、人情という言葉のイメージを決定付けた、日本文化の一つの金字塔のような気がします。
オンリーワンの魅力にあふれた一作。