KKMX

男はつらいよのKKMXのレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.0
 ちょうどシリーズが4Kリマスター上映されるため、まずは肌に合うかどうか試しにDVD鑑賞しました。結果、割と合いました。シェケナの時みたいにど真ん中ではなかったため、全作品鑑賞予定は今の所ないですが、リリー回とか名作とうたわれる回とかを劇場でもボチボチ観ようと思います。


 国民的キャラクター・寅さんですが、ウザくて暴力的なので中盤までは受け入れ難かったです。しかし、話が進むにつれて寅さんの優しさと悲しさが伝わってきて、比較的好意を持ちました。

 本作を観て感じたことは、寅さんは永遠の少年ですね。超ゴツい顔のピーターパン。ポジ面としては、優しくて純粋、活動的で愛に溢れています。
 寅さんは時におせっかいに思えるほど、人のために行動します。そして、他者の正直な言葉を見抜き、真正面から受け止めて感動します。寅さんはハタ迷惑でウゼえ男でありますが、周囲の人たちは彼の優しさを理解しており、だから彼を受け入れるのでしょうね。
 終盤、舎弟ノボルに見せた寅さんの一見ガサツな態度からは、彼の不器用な優しさが滲み出ていて心が打たれました。

 そしてネガ面。少年ポジションに居続けたいというか居続けざるを得ないため、大人になれません。愛に溢れていてもどこかワガママでコントロールが効かず周囲も自分も傷つけます。寅さんはかわいいから周囲が許してくれちゃうので、それを繰り返してしまう。これが負のスパイラルになってます。
 真人間になりたいという葛藤はあるものの、本来の優しさと弱さと、それを良しとしてくれる環境があるため、少年性を振り切ることができずに渡世人から足を洗えません。彼がほんとうに求めているものは、主題歌にあるように妹に誇れる『偉い兄貴になる』ことです。しかし、寅さんはさくらちゃんやとらやの人たちの優しさに甘え、ぬるま湯から飛び出せないのです。

 常に誰かを思いやって生きることができる男。しかし、大人になれずに永遠のモラトリアムを生きている。マドンナとは結ばれないが(結ばれたら少年から大人になるため結ばれない)、その代わり責任を取らずに自由でいられる。また、本シリーズには父性的な厳しさを持つキャラがあまりいません。たまに御前様がビシッと言うくらい。だから寅さんは少年のままでヌクヌク生きられる。
 世知辛い浮世を生きる我々にとって、寅さんはある意味羨ましい存在です。本シリーズが描いているのは一種のユートピア、ネバーランドだと思います(MJ的なやつじゃないよ)。なので本シリーズが普遍的に受け入れられているのもよく理解できました。


 そして、本シリーズは脇を固めるキャラも豊かであります。なにせ、妹さくらちゃんが強烈にカワイイ!『恋する惑星』のフェイ・ウォンの次くらいにカワイイです。倍賞千恵子、ちょっと可愛すぎではないでしょうか?品があって芯が強い。意外とプロポーションが華奢すぎという印象もありましたが、逆に庶民的な雰囲気が出て、さらに彼女を魅力的にしていると感じました。個人的には夏目雅子・原節子以来の衝撃であります!本シリーズには毎回マドンナが登場するようですが、本シリーズ全体のマドンナはさくらちゃんでしょう!栗色の髪が印象的でしたが、地毛なのかな?
 ヒロシも実直で真面目な感じが好感持てます。寅さんと対をなすようでいい感じでした。しかし、あの告白は現代の価値観からするとかなりキモい。覗きってことですよね…
 おいちゃんやおばちゃん、タコ社長といったとらやをめぐる温かい人たちの存在も大きいと感じました。

 また、俺的に超嬉しいサプライズは、昭和のゆるキャラ・スキニーオールドメンこと笠智衆が御前様という住職役で出演していたこと!
 グフフ…相変わらずの量産型演技に萌え死にです!バターのときの不自然なしかめ面も萌えますが、さくらちゃんの結婚式のスピーチで寅さんのことばっか繰り返しちゃうのがキュートすぎ!これはアレですかね、腐女子様方的には、寅ちゃん×スキニーオールドメンとかあるんでしょうかね?また法衣が死ぬほど似合っていて、さすがリアル寺の息子です。

 本作をもって無事つらいよワールドに入門いたしました。今後も少しずつ観ていこうと考えています。
KKMX

KKMX