ハル

歩いても 歩いてものハルのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
3.8
昭和チックな家庭における日常、そして、その中に垣間見える人間の心の機微。煩わしい家族だけれど、かと言って放っておくわけにもいかない。何かしてやろうと思った時には大抵遅くて、間に合わない。まとめるとそんな感じ。

阿部寛さん扮する次男の視線から見るとより感じるものがあるかも。

子持ちの女と一緒になったはいいけれど、できれば、実家に連れて帰りたくない。両親は次男の結婚を良いように思ってないフシがある。特に父親は長男のことを引きずっているから顔を合わせづらい。

10年前、長男は海で溺れた子供を助けて死んだ。助かった子供は、毎年、家を訪れ、長男の遺影に手を合わせるとともに、遺族に近況を報告する。それが儀式のようになっている。可哀想だからいい加減やめてあげたほうがいいんじゃないかと指摘すれば、「10年やそこらで忘れてもらったら困る」と母は言う。

「何て、何て面倒くさいやつらなんだ。でも、家族だしな。たまには親孝行してやらないと」

何て思った時にはもうそこにはいない。人生はいつだってちょっとだけ間に合わないと彼は言うが、まさにその通りだと思う。

ふとした瞬間に滲み出る家族の本音に怖さや煩わしさを感じながらも、最後にはそんな人たちを許そうと思えてしまう。これほど家族に対する愛に包まれた作品を、私は知らない。