以前から気になっていたものの、"家族という名のホラー"だったという、見るからにヤバそうで重たそうな感想を多方面から聞いていたので、観るのを躊躇っていた本作。
意を決してレンタル、そして鑑賞。
うん、やっぱり辛かったです…
この「帰省先で親戚同士が、誰も面と向かって言うべき相手と向き合わずに、小声で互いをディスり合いながら取り繕いあう団欒の図」って自分にも覚えがあって、すごく居づらかったことを思い出してしまった。しかもこの作品は一切その一部始終を飛ばさずに、余すところなく見せつけようとしてくるのだからたまらない。姉一家を観て(ムカつくなこいつら早く帰れよ…)と、何度思ったことだろう。そりゃ、行く前にファミレスで時間を潰したくもなるし"自分の部屋"に閉じこもりたくもなる。その上、やっと姉一家が帰ったと思ったら今度は、樹木希林さん演じる母親が何気なく投げかける一言が示唆する意味の恐ろしさや、実はこう思っていたと明かされる仄暗い本音などが随所で突きつけられ、「koeeeee!!」となること受け合いな作品だった。
ただ、それだけだったら怖くて後味の悪い作品だったねで終わるところなのだが、冒頭提示された「誰も読まないのになんで手紙を書くの?」という問いに、この作品は作品すべてを通して誠実に答えを出そうとしているので、安易に消費しきれない余韻が残るのが素晴らしいと思う。
また、エンディングが少し救われる展開だったのも良かった。ああ、あの二人はあれからすごく頑張ったんだな。自分たちの信念を貫き通して、きちんと彼らができる範囲での責任を全うしたんだな…と思って、ちょっと安心した。蛇足なのかもしれないけれども、あの展開があるのと無いのとでは天地の差があったと思う。
それと、物語自体はコールタールのように真っ黒でドロっとしていますが、目に入ってくる映像と耳に入ってくる音楽は非常に美しかったです。撮影アングルや構図、是枝作品では十八番の、まるでそのまま他人の暮らしを覗いているかのような"あの家"のセット、海を望む高台からの光景、そして演者の方々の自然で抑揚のある演技…全てが秀逸で美しかったのが救いでした。
美味しそうな手料理も。
トウモロコシの天ぷら、食べてみたいな…。
生と死と家族について、嫌でも考えさせられる作品です。
お盆明けの今の季節にピッタリな作品かもしれません。
しんどいですが、ぜひに。