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歩いても 歩いてものDcatcHerKのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
4.1
 あまりに個が重視される時代。本当にそれでいいのだろうか?という思いが、最近強くなっている。
 家族って、大事だよなと。いつも、どこでも、家族を思っていることって。
 “家族として繋がっている”ってこと、大事だとそう思う。

 母が子を思う気持が本当に強いことは、自分も経験した。
 幼いころから、母にずっと守られてきた。
 しかし、“母を守った”ということってあったのだろうか?
 この映画で、阿部寛さん演じる横山良多が、自分のことに精一杯で、母親に何もしてあげていないのを観て、自分を見ているようだった。母が亡くなった今では、多少やってあげたことがあったとしても、それで十分だったか、成人してからも迷惑ばかりかけていたと、折に触れて考えている自分がいる。

 それでも、樹木希林さん演じる母親横山とし子のように、世の母親は、子を思い心配し、かいがいしく世話を焼き続ける。愚痴をこぼしながらかもしれないが。

 そして、父親。子のことを期待している分、厳しいことを言う。だからと言って、認めていないわけではないのに、愛情表現が不器用で空回りしている。そんな父親横山恭平を原田芳雄さんが演じている。

 阿部寛さん、樹木希林さん、そして原田芳雄さんの安定の演技。樹木希林さんと原田芳雄さんのシリアスなシーンほど、コミカルで笑ってしまう。近すぎて言えないこと、言わなくてもいいことを言ってしまうことなど、きっと、自分にも自分の周りにもあって、「バカだな」と自分に重ね合わせて笑ってしまっているのかもしれない。

 良多の妻横山ゆかりを演じた夏川結衣さんが、「『家族はつらいよ』シリーズ」より艶っぽくみえたのは、撮影時が、今より若かったからなのかなぁ、それとも、元々艶っぽいのかなとくだらない考えを。

 ゆかりの連れ子あつしと、血はつながっていなくても、“家族”として繋がっていく感じも良かった。家族って“血の繋がり”だけではないということだと思う。

 改めて、墓参りや里帰りの大切さを感じた映画だ。
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