このレビューはネタバレを含みます
ノスタルジックに揺られて
この作品は、特にお涙頂戴っていう作品でもないし、楽しい展開があるわけでもない
ただただ、一つの家族の一場面を淡々と切り抜いたみたいな作品。悪く言えば、退屈。よく言えば、これこそ人間って思える映画。
監督はあの『万引き家族』を作った人で、細部のリアリティというか、登場人物同士の微妙な関係性がもろに描かれてる。とくに、なんとも言えない人間模様を見るのが好きな人にはこの映画がドンピシャでハマるんじゃないかとも思う
細部のリアリティの例を挙げると
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・主人公の再婚相手の連れ子が主人公(阿部寛)をお父さんとは呼んでいないところ
・主人公(阿部寛)が若くして亡くなった優秀な兄と今でもたびたび比較されること
・子持ち未亡人と結婚した主人公をあまりよく思わない母
・実家に帰ると風呂場に手すりがついていたり、歳をとり隣人の力になれなくなった父(元々開業医で、今は引退した)
・再婚相手に嫌味に取れることを故意に言う主人公の母(樹木希林)と無意識な父(原田芳雄)
・子供の言う、おばあちゃんちという言い方や写真の隅っこが気に入らない父
・主人公の母が他人のお墓に余った花をさして帰るとこ
・重くなった場の空気を和ませようとする姉の夫
・料理を子供に取り分ける時に、箸を奇麗にしようとしてめっちゃ舐める父
・階段の途中で父の足を気遣い携帯を見るふりをして足を止める主人公(でも、関係性は微妙だから手助けとまではいかない)
・お墓参りの時に母から聞いた話を、数年後母が亡くなった時のお墓参りで妻と子供にする主人公
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他にもあるけど、なんというか細部の設定というか、なんとも言えないあるあるというか
これこそ、人間みたいな感じが自分にはすごい印象的だった(他のレビューの中には、人間はもっと薄汚いというか、こんなのはリアリズムとして中途半端って意見もあったけど)
あと、作中の情景や音楽がなんともノスタルジックで、思わず両親や、祖父母に会いたい気持ちにさせられたし、これを機に家族とのあり方を見直すのもありだと思った
作中の曲の中でいうととくに、映画のタイトルにもなってる『歩いても 歩いても』っていうサウンドトラックは、ほんとに良い。聞いたらわかる
映画としては、娯楽って感じの作品ではないけど、なんとも言えないゆっくり流れるしっとり感というかを味わいたい人におすすめ
お盆前に一度は見て欲しい映画