純

巴里祭の純のレビュー・感想・評価

巴里祭(1932年製作の映画)
4.7
20歳というみずみずしい季節を思い出す。小さなことですぐ笑顔になったり膨れっ面に変わったりするアンナが抱きしめたくなるほど可愛くて。ひらひらと揺れる彼女の袖が雨でしっとり濡れている。雨宿りを口実に、きみともう少し一緒に居たい。

もう少しで戻れそうなのに、なかなか素直に相手と向き合えないふたり。危なっかしくて、少しまぬけで、でもとびっきりやさしくて美しい、パリの街。雨が降るたびに、あの家の玄関にあなたがいないか確かめたいの。わたしたち、臆病だから、本当の気持ちを伝えるのに自分たちだけじゃ心細い。何か理由が欲しかった。会うのにも、離れるのにも、声をかけるのにも、触れるのにも。どうして、お天気のいい日はこんなにも気持ちいいのに、少し寂しくなるのかしら。

小さな居酒屋であなたと握手をしたとき、またきっと出会えると思った。もう嫌いよああそうかいって、次にあなたと喧嘩するのは、やっぱり雨の日がいいわ。
純