滝和也

第3逃亡者の滝和也のレビュー・感想・評価

第3逃亡者(1937年製作の映画)
3.7
ヒッチコックの
英国時代の佳作。
巻き込まれ型
サスペンスの基本形。

「第3逃亡者」

デパルマの流麗なカメラワークはヒッチコックの作品の影響が大きいのは周知の事実。そこで思い出したのが今作。久しぶりの鑑賞。

浜辺に打ち上げられる美女の死体。側にはコートの紐が…。最初に発見した主人公は助けを呼びに行く姿を海水浴客に見られ、容疑者となる。その美女は彼に遺産を残していたため、警察の杜撰な捜査で裁判に掛かりそうになるが脱出。その際に巻き込んだ警察署長の娘と真犯人を見つけようとするが… 

アメリカ時代のヒッチ作品に比べ、牧歌的でどこかノンビリした雰囲気。巻き込まれ方もシナリオには甘い部分が見受けられるが、随所にサスペンスを盛り上げる仕掛けがあり、飽きさせない。

先ずは波間から見える美女のしなやかな腕が、ショッキング。メガネを使った脱出劇、そしてこの時代には珍しい車での逃亡劇、列車との交差によるサスペンスなど意欲的なシーンもある。また大仕掛けも車関連。廃坑に入って隠れようとするが車自体が落盤で沈み、地下に落ちようとする中、ヒロインに手を伸ばして助けようとするシーンは時代を考えればかなり凄い。

そして、ラストのカメラワークの凄さはヒッチコックならでは。ホテル内を俯瞰で取りながら、徐々にある一点真犯人の顔に近づいていくカメラ。その流麗な動きはこの部分だけでも加点に値する。

英国の田舎を舞台に、英国らしさが出ている故ののんびりした雰囲気だが、見るべき箇所は多くヒッチコックらしさのある佳作です。時間もみじかいのでお暇なときにでも(^^)
滝和也

滝和也