明石です

欲望という名の電車の明石ですのレビュー・感想・評価

欲望という名の電車(1951年製作の映画)
4.7
名家に生まれながら、歳を重ね落ちぶれてしまった自分を直視できず、真実であるべきことしか語らないうちにいつしか嘘で塗り固めたおとぎ話の住人となってしまった哀しきオールドミスと、厳しい現実を直視し生きてきたタフな移民二世の男。生まれも育ちも違う2人が、互いに憎み合い傷つけ合いながら共生する話。

以前に読んだテネシー・ウィリアムズの戯曲が面白かったので、その時の記憶を辿りながら鑑賞。元がブロードウェイの演劇に向け書かれた作品なので、台詞や役者の演技が若干大仰ではある。けどそれがかえって意匠を凝らしたハリウッド黄金期末期の作品という感じもするし、それに50年代初期ということで、まだまだハリウッドが現実を描いてなかった時代の作品だと思えば、意外とすんなり入っていけた。ただこれがモノクロじゃなかったら、、ちょっと厳しかったかも笑。

死の対極は欲望、というブランチの台詞に背筋が伸びる思いでした。なぜ彼女がここまで落ちぶれ、ふしだらな道に走ることを選んだのか、本作を見て腑に落ちた。若い頃に自殺した夫(という彼女の話が本当だとして)の影を振り払うために、死の対極にある行為に走らざるを得なかったということか、、深い。そしてこの1人残らず不幸になる負のカタルシスが堪らん。

マーロンブランドが映画初主演とは思えぬほどにギラギラ輝いてる。飢えた狼のような野生の雰囲気が、現実のことわりを泥臭く生きる姿に説得力を与えてますね。そして落ちぶれたオールドミス役がヴィヴィアン・リーというのも言わずもがな素晴らしく、『風と共に去りぬ』で、名家に生まれた生粋のお嬢様を演じた彼女、のその後の物語だと思うとなお怖い。そう見えるようキャスティングした製作陣の心意気に拍手ですね。

『何がジェーンに起こったか』や『サンセット大通り』のように、胸にグサリと刺さる共感性羞恥を呼びながらバッドエンドに向けひた走っていく、どこにも救いを見出せない物語が好みな私としては、大歓迎な1作でした。主人公に関わった人間が1人残らず不幸になるとか最高すぎる。そして見終わった後、少し心が寒くなるこの感じ。自分が見たいものしか見てない人間の成れの果てを追体験し、充実した、けれども身につまされるような視聴後感、、有意義なひと時ではあったけど、でもこの後は底抜けに荒唐無稽なスパイアクションでも見たくなるなあ笑。てなわけでドロン!!
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