縫い裁つりんこ

K-19の縫い裁つりんこのレビュー・感想・評価

K-19(2002年製作の映画)
4.0
原潜の原子炉がメルトダウンしかけたのは造った国の造船会社と無茶をしたハリソン・フォードのせい。彼とは対極的な副艦長のリーアム・ニーソンが彼の最後の良心だった。
冷戦下の緊張の中、ソ連軍人にとって祖国のプライドや特命の遂行は1番だけど、戦争でもないのにその中で家族同然の仲間の命が失われていくのを目の当たりにする苦しみはきっと相当なものだし、助けられたかもしれないから納得もいかないだろう。優しすぎるリーアム・ニーソンなら上からの無茶苦茶な命令を捌き切れなくて人道的な判断としてアメリカに亡命してただろうな…。根っからの軍人気質なハリソン・フォードも非人道ってわけじゃないけど、責任者としていちいち意思決定で悩んでてもキリがなかったんだろう。命令に逆らえない、どうしようもない上の立場をリーアム・ニーソンがある程度理解しつつ、だんだん歩み寄っていって、終盤に2人がタッグを組むとこはすごく熱く、感動した。

映画の中でのK-19の船出が不吉すぎるのはもはや冷戦ジョークなのかってぐらい笑ってしまう。物資も人手も何もかも不足してて、原潜の部品が足らないまま未完成で出航するし、整備中に整備員が死に、乗組員の医者も死ぬ。補充の乗組員が実戦経験が無いぺーぺー。極め付けに門出のシャンパンは割れない。不吉。
色々足らなくてぶっちゃけダメってわかってるけど、いけるいける!って主に偉い人達が極限で見栄を張っちゃって、周りもうーんまあ命危ないけどいくしかないんとちゃうかな!?!?、?って腹括っちゃう残念な感じが本当にソ連。ちょっと前の日本やドイツもかつてはそういうとこがあった。今でも冷戦時代史すごい好きだけど、やっぱりそんな時代に生まれなくて本当に良かった。

観た人ほぼみんな言ってるけど、バリバリのアメリカ映画のベテラン俳優がソ連の原子力潜水艦に乗ってるのはやっぱり違和感あるよね。