Jeffrey

ザ・チャイルドのJeffreyのレビュー・感想・評価

ザ・チャイルド(1976年製作の映画)
4.0
「ザ・チャイルド」

冒頭、7分間によるモノクロ資料映像の数々の惨劇情報。フィルムはカラーへ。ここはスペインのある町。バカンスへ英国人生物学者と妊娠中の妻が到着した。沖合の小さな島、不穏な空気、無数の子供達、港、祭り、怨念と復讐。今、子供を殺せるかを考える…本作はナルシソ・イバニェス・セラドールが、1976年に監督した奇跡の様なホラー映画の大傑作で、遂に4KBDが発売され、久々に鑑賞したが面白い。まずファン・ホセ・プランスの原作をルイス・ペニャフィエルが脚本してるんだが、本が良い。因みに原作の意味は"子供たちの遊び"だそうだ。70年代のカルトブームに突如として現れたスペイン産ショッキング・ムービーで、異色な本作は77年アボリアッツ・ファンタスティック国際映画祭で批評家賞を受賞し、現在もホラー映画ファンにカルト的人気を誇っている。本作が遺作になったワルド・デ・ロス・リオスの音楽も良く、ヒッチコックの「鳥」へのオマージュ、様々な戦争、紛争の犠牲になった罪なき子供達の怨念を暗示した冒頭は有名なシーンだろう。


さて、物語は真夏のスペイン。バカンスを過ごそうとイギリスからやってきた生物学者のトムと妊娠中の妻イブリン。海岸の町ベナビスは祭りの真っ最中で、その喧騒から逃げるように2人は昔トムが訪れたことのある静かな島アルマンソーラへとボートで向かう。しかし奇妙なことにそこは子供しかおらず、大人の姿が一切見えなかった…と簡単に説明するとこんな感じで、誰が子供を殺せるかと言う題名を持つ伝説的名作ホラーが堂々と復活し久々に鑑賞したが素晴らしい。今回は日本語吹き替えも収録されている。いゃ〜、冒頭の7分半によるモノクロの資料映像でもう胸焼けする…目を覆いたくなる程酷たらしい映像はキツい…。丁寧に戦争の歴史の情報を伝え、そこからモノクロ映像からカラーフィルムと徐々に変わり、舞台はとあるビーチへと始まる。あの街のお祭りのシーンかなり金かけてるのが分かる。ベットシーンで、フェリーニの「甘い生活」をディスる場面はウケる。スペイン映画は1968年からホラー映画のブームが始まって、その中でも70年代の本作は最大級の傑作ホラー映画だろう。愛称チチョで名が通ってきた監督は、家族が映画監督とかサブラブレットの生まれである。今思えばフランコ政権かのスペインは紛れもなく独裁国家だったのは周知の通りで、そういった様々な歴史を経て、メディアや文化活動における検閲が少しずつ良くなってきた中で作り上げられた1本である。確か、スパニッシュ・ホラー・プロジェクトとして日本でも発売されたDVDで昔見たのだが、確か6作品あり、その中で「産婦人科」と言うタイトルが面白かったと記憶している。そして2019年1月にスペインアカデミーがゴヤ名誉賞を与えられるが、その僅か5ヶ月後に亡くなっていることも悲しい出来事として最近の記憶にとどまっている。
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