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鶴は翔んでゆく/戦争と貞操のkyokoのレビュー・感想・評価

4.3
「誓いの休暇」は青年があまりにも優しくて淡い初恋があまりも煌めいていたもんだから、願いが叶わないことへの哀しみが襲ってきて鑑賞後は「ああああ泣泣泣」となってしまったのだけれど、こちらは恋人との未来を奪われた女性の悲劇の先に思いがけず力強さと未来への希望を見せてくれる作品だった。
戦争孤児の逞しさと大切な人と抱き合う笑顔と帰還兵の「平和への誓い」に救われた彼女の涙が美しすぎて鳥肌。

そして「怒りのキューバ」同様にセルゲイ・ウルセフスキーのカメラワークが素晴らしい。
カメラは恋人たちの逸る思いに疾走し絶望とともに激しく回転する。クズ男マルクがベロニカに襲いかかるシーンは、ラングやヒッチコックを思わせる陰影の濃いショットがものすごくサスペンスフルだった。

「戦争と貞操」という公開当時の時代がかった邦題は、戦争によって狂わされた彼女の人生をこれ以上ないほど端的に表している。
医師として聡明で理解ありげなボリスの父親から思わず出た本音には力が抜けた。ほうほうそうですかお父さん、私も英雄を捨てた尻軽女ですか。でも操が守れなかったのはあなたがマルクに私のことを丸投げしてくれたからなんですけどね!と私ならイヤミ全開するのに。
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