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鶴は翔んでゆく/戦争と貞操のhighlandのレビュー・感想・評価

3.9
広角レンズ、縦に伸びる構図で手前に人物の顔、奥にもう一人の人物を配し移動させることで画面に活気を持たせる、人物の移動に合わせて何種類かの構図を切り替えて繋いでいくお手本のような長回し、『怒りのキューバ』もそうだが群衆をかき分けるように横移動する長回しを多用。長回しは画面に映る物量を増やすか、このくらいの工夫があった方が面白くなると思う。
戦争で生き別れる男女のドラマだが、男が割と中盤であっけなく死ぬのでちょっと驚いた。男が死ぬシーンはフラッシュバックで螺旋階段に上がって行った先であり得たかもしれない結婚式の幻想が映る、それらが声の残響と共に多重露光とディゾルブで人物の顔や実景と重なって遷移していき、とんでもなく凝ったイメージになっている。
贈り物に入れて女に託した手紙が見つかって読まれるのが男が死んでからのタイミングで、すれ違いの王道メロドラマな展開。プロパガンダみは強いもののラストのクレーンで引いて群衆を映すカメラワークも鶴を見上げるのも全て満点。
人工的でねっとりと濃い画作りの感触がすごく黒澤映画に近く、そういえば黒澤もロシア的な感性の人だったと思い出すなどした。
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