さぴお

おもひでぽろぽろのさぴおのレビュー・感想・評価

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.7
「田舎いいなぁ」「過去はいいなぁ」
高畑勲がそんな話で終わる訳がない!!!!!

ラストの電車のシーン、泣きました。
過去の自分が私を支えてくれる…。
そのメッセージがぶっささりました。

世間一般から見たら、羨望される企業に入るも人生に悩む主人公のタエコ。
子ども時代の憧憬から山形の田舎へと旅行に旅立ち農作業を手伝います。
そんな折に過る子ども時代の「おもひで」
その子ども時代の思い出が自分を形成し、そして最後の決断へ至らすプロット。
一言では表せない、一筋縄ではいかぬ手法にひたすらに驚嘆し共感し涙してしまいました。

高畑監督ですが、表現技法も多彩極めています。
もうすべてのカット、背景、アニメーション、台詞に、カット尺に意味があるのではないかと考えさせられる。

一番顕著なのは「現代」と「過去」のタッチの差ですね。
現代は近藤喜文独特のえくぼ表現。パッキリとした色合い。
大して「おもひで」の方は、背景が白飛び気味で、表情も少女漫画チック。
ゲッソリした顔や嬉しい表情。舞い上がって空を泳いだり、ひょっこりひょうたん島をうたったりと非現実的な要素多数。
子どもの頃は本作を見ても「いやな奴ばっかだ」「学校あるあるだなぁ」くらいにしか思わなかったけれど、
この年になって観ると「いろいろな考えをもった人間がそれぞれ生きてるんだ。こんなことにもなるさ」という感想に。
たか高畑監督の少女漫画などに見られるご都合主義の否定。
「主人公の思い通りにはいかせない」という意志を感じますねぇ…。

特筆すべきは音楽のチョイスですね。
全てが効果的でこの感良さは宮崎さんより圧倒的に優れてると思います。
ハンガリーの音楽をチョイスしちゃいますからね。

タエコが基本的に電車で移動していて、
カズオが車で移動する。
これもそれぞれのキャラクターのメタファーになっていますよね。
電車は前と後ろにしか発進しない。「決意」をしめしている。
クルマは自由に動き回れるけれど、基本的には特定の地域からは出ない。
電車に乗るということは、ある種の決意。終わりを示しているんですねぇ。

そんなメタファーで最後の展開をあのようにまとめたのは、見事という他ないですね。


俺が、ぽろぽろでしたわぃ!!

お粗末!!!!!!!
ということで、高畑監督、ご冥福をお祈りいたします。
さぴお

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