だすぷーちん

パリの灯は遠くのだすぷーちんのレビュー・感想・評価

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)
4.5
1942年パリ。ナチス占領下のパリを脱出するために私財を処分しようとするユダヤ人を喰い物にしていた美術商、ロベール・クライン。もう一人の「ロベール・クライン」の罠にはまり、ナチスの手先となったパリ市警に追われて、酷い目に遭う!
   

いきなり、だだっ広い、警察の部屋ですっぽんぽんで立つ、泣きそうな表情のおばちゃん。

おばちゃんの鼻、あご、くちびる、耳をつねったり引っ張ったりして調べる白衣姿の医師。

口述する身体所見は、書記役の尼僧が書き留めます。

これは、ユダヤ人の疑いのある女性に本当にユダヤ系人種的外見特徴があるのかをみる身体検査です。

当時のパリ市警には、ナチスの支配下でユダヤ人狩りを行う部署があったようです。

それにしても、警察でこのような、ハラスメントイベントが行われていたとは……、ここはかなりショッキングなシーンです。

イケメンドロン様のほのぼのラブストーリー的な展開が好きな方は、このシーンをみてから、他を当たるか、見続けるか、考えた方がいいと思います。

正直、ほのぼのシーンはこの映画には ありません!

場面は切替わり、ドロン邸です。

ドロン様は今回、美術商ロベール・クラインとしての登場です。

ロベール邸を訪れたユダヤ人の紳士、600フランで持参した絵を買ってくれとのこと。

ロベール君は、彼の足元をみて300フランで買い叩きます。

早く逃げないと、いつパリ市警にたいーほされて、ナチスに身柄を引き渡されるかわからない危険な身の上の紳士は、泣く泣く絵をロベール君に託してロベール邸を去るのでした。

その紳士を玄関まで見送ったロベール君は、玄関先に覚えのない郵便物が届けられるのを発見します。

それは、ユダヤ人の会が発行する、ユダヤ人向けの薄っぺらい会の機関紙。

はて?

純粋フランス人として生まれ、育ったはずのロベール君。

なぜユダヤ人向けの郵便が来るのか解せませんが、これは、同姓同名の別人に送られてきたものかなと解釈します。

しかし、自分の住所を勝手に使われるというのはいささか不愉快なのでユダヤ人の会に出向き、ことの次第を調べにいきます。

ユダヤ人の会のオフィスで、ロベール君の応対に出た男は、同性同名のユダヤ人の存在を認めますが、そのユダヤ人の住所など個人情報は、警察に召し上げられていてここでは、わからないとのことです。

 !

警察に、ユダヤ人に誤認されかねないという由々しき事態にはまってしまった事を知るロベール君。

警察を訪ね、自分になりすました「ロベール・クライン」の住所を突き止めようとしますが、逆に警察にマークされてしまいます。

ミイラ取りがミイラになる、という言葉がありますが、ユダヤ人をカモにしていた自分が、謎の同姓同名のユダヤ人にカモにされてしまったロベール君、このままでは、パリ市警にたいーほされてナチスに身柄を引き渡されてしまいます。

焦ったロベール君は、自らの出自を明らかにし、自分を窮地に陥れた「ロベール・クライン」をとっちめようと、行方を捜すのですが……。

   * *

あまり有名ではなさそうな、ドロン様のミステリーです。しかし、だすちー的には傑作認定です。

最後のシーン、実にタイムリーなのですが、ナチスに蹂躙されるパリの街とロシアに占領されたウクライナの街が、だすちーのアタマにオーバーラップして映ります。

侵略やめろー!

極めて皮肉的、かつ、極めてショッキングなラストシーンにだすちーは心を激しく揺すぶられてしまいました。
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