【1967年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
『怪談』などの名匠小林正樹の時代劇。ヴェネツィア国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞しているのだが、コンペティション部門には入っていない…どういうこと?
江戸時代、とあることから封建社会に反抗する3人の人物を描く作品。
すごく面白い。前半は司葉子演じるいちに何があったのかという興味で引っ張り、後半はいよいよ幕府との闘いに身を投じる姿を劇的に描いている。
司葉子が素晴らしい!自分の意思をしっかりと持つ強い女という役柄にあったキャスティング。凜とした眼差しがカッコいい。
養子として妻の尻に敷かれる伊三郎が満を持して反抗するのが最高にカッコよく、勝ち目もないのに「初めて生きている感じがする」という生きがいを最後に見出すという熱い展開が胸を打つ。
長男の与五郎は妻と子を愛す優男であるが父とともに立ち上がる。親子の共闘は胸アツ。
仲代達矢も美味しい役。封建社会に不満を持ちつつも親友の伊三郎と戦わざるを得ないのが哀しい。
浅野と伊三郎が終盤子をあやすところなんかまるで夫婦のよう。友情を超えて互いを理解し合っているのが伝わる。
演出も何気ないが巧みで、左右対称の画面、舞台のような照明と『怪談』とも通じる美意識が全体を貫いている。
封建社会への反逆というテーマをドライに、スタイリッシュに仕上げた秀作と言えるだろう。